†短編†

□大人のよゆう(柔造×廉造)
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京都の実家に帰郷して2日目の夜。

俺は目の前で真面目に書類に目を通したり書き物をしとるこん人にうずうずしとる真っ最中。(あ、シモの方やないで!)

「なあ、柔にぃ・・」

「・・・」

集中しとると周りの音が耳に入らんのは相変わらずのようで、実はこれでも数回は繰り返しとる。

さすがに痺れをきらした俺は、ちょっと躍起になってまたその愛称を呼ぶ。ちょっと強めでリトライっちゅうわけや。

「柔にいっ!」

「なんや、やかましい」

「はぁ・・やっと気づいてくれはったゎ」

それだけで頬が緩む。

けれど柔にぃは隣に座るそんな俺の顔を一瞥すると、

「またそない締まりない顔して・・ホンマしょうもないやっちゃなぁ」

とだけ溢し、目線を机上に戻した。

それから言葉は紡がれてへんことから、このままでは会話が終わってまう、と俺は慌てて返事を並べた。

「そ、そないな顔しとったか!」

「なんや自覚ないんか。せやから金造みたいになるんやで」

ホッ

なんとか話しはしてくれそうやと俺は安心した。


「・・で、何か用か?」

「て、今更っ!?はぁ・・何べんも呼んだんに、なんで気づいてくんないんですのぉ」

「おぉ、そうやったんか?すまんすまん。今忙しゅうてな。堪忍してや」

「おん・・そんくらい知っとるからええですよ」


そう言いながら俺は目線を落とした。

柔にぃはずっと気ぃ張ってはる。青い夜の一件後、次男やのに跡継ぎにさせられて、それでも文句も溢さず、早朝から夜遅くまで仕事詰めで、本当にようやってると思う。

そんな人と両想いで結ばれたとは言え、柔にぃが大人な余裕を崩したことは未だない。

そもそもそれを崩してはいけないような気もして、今更ながら後ろめたさを感じてしまう。

やっぱ部屋に戻ろうか、そう思った時。

ポンポンッ
と頭を優しく叩かれた。

パッと顔をあげると俺と向き合う形に座り直し、尚且つ心配そうにする柔にぃがおった。

「どないしたんや廉造?兄ちゃんに言いたいことあるんなら言うてみ。今度はちゃんと目見て聞くさかいな」

頭から頬におちたそん手に優しく撫でられ、俺はぽーっと柔にぃしか見れんくなった。

モジモジしながらも、俺は少しずつ自分の思うてることを言うてみることにした。

「あんな、俺な・・柔にぃ、好きやねん・・」

「おん・・俺かて廉造好きやぞ」

サラッと言い寄った。

それ聞いた俺の方が余計余裕なくしそうで、なんとか在る分だけでも気ぃ張ろうと努めた。

「そ、それは、その・・わこうてるんです。・・せやけど、その、えっと・・・」

「はっきり言えや廉造」

少し短気なところがある柔にぃから低音がビシッと飛ばされた。

それに勢いを持ってかれて、俺は溜めこんどったもんをバッと口から出した。

「・・っ。せやから、俺にもっと構ってもろうたいんですって!」

一度口から出たら最後、全て吐き出してしまいたくなる。

「柔にぃはもう大人やから、好いとる奴に対して理性とか欲求抑えられるんやと思います。せやけどなぁ・・」

柔にぃもそこは分かってるようで、終いまで聞いてくれる様や。

「俺はまだ幼うて、根っからのアホで、煩悩な知識はあっても、恋仲の経験はないんです。それに、柔にぃは俺になんも弱いとことか甘いとことか必要以上に見してくれへんし、俺だけそないことあるの嫌なんですゎ。もっと柔にぃとおんなじ目線で、おんなじようにドキドキしながら仲ようやりたいんです!・・こないなこと言うて、また柔にぃの重荷になるんは分こうてます。せやけど、せやけど俺柔にぃがす」

き、
と言いきる前に、柔にぃが俺を引き寄せて。

俺にチューしよった。

「じゅ、に・・今キス・・・」

そっと離れたその場所を手で触ると、僅かに濡れていた。

「お前にそないかいらしいこと言われて、大人の余裕なんか保てるかアホッ!・・せっかく抑えとったんにどないしてくれるんや。もう我慢できへん、廉造、お前、」

覚悟は出来てるんやろな、

そう言ってペロリと柔にぃが自身の唇を一嘗めすると

ゾクッ

餓えた獣のようなその言葉も、視線も、仕草も、全てが俺を興奮させた。

「ええよ、柔にぃ・・構ってぇ、理性なんか棄ててええから、もっと仲ようしましょおや」

せやから声が上擦ってしもうて、けどそれが逆に卑猥に響いたのか、柔にぃは俺を押し倒して深く口づけを落とした。

甘く蕩ける口づけ、熱く火照る吐息。

俺の中で、快感が膨れ上がっていく。

「ッンふ、じゅ・・に、ぃアふぁ」

キスをしながら好きな人の名前を呼ぶ。

「いま、は、な、まえで・・呼びぃ。廉、造・・」

しかも、2人だけの時限定という特典つき。

「じゅ、ぞ・ン・・す、きぃ、柔造っ、柔造!」

その名前を呼びながら、より密着したいと柔にぃの肩に腕を伸ばせば、柔にぃは更に頭を近づけてくれはる。

ギュッてすれば、更に口の中で舌が暴れた。



大人の余裕て、案外脆いのやもしれませんねぇ。


 

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