†短編†

□コスプレボーイズ!(勝呂×志摩+燐)
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いつも通り塾を終えて、この後の流れを頭ん中に思い描きながら自分に分け与えられた自室の扉を開けた。

そこまでは、普通なはずやった。


「おー勝呂っ、おかえ・・」

「ちゃうやろ?こうやて、・・おかえんなさいませ、ご主人様」

「そかっ・・・お、おかえりなさいませ、ご主人様っ」

「せや、それやで!」

どこのどいつが、自室がこんな風になってると思うて帰ってくるのやろうか。


「なっ、何しとんねん、ど阿呆っ!!」


「・・何って、見てわかる通りメイドさんですょ。かわええでっしゃろー」

すっかりご機嫌な志摩はサラッとそんなことを言う。・・誰かてそれぐらい分かるわ。

「てか志摩の・・スカート短すぎじゃねえの?」

なぜそこで頬を染める奥村!お前かて長めのそれ穿いとるやろ!!


アカン、突っ込み所がありすぎる。

長めのため息に眉間の皺を更に深くしていると

「あ、せや坊!」

「・・なんや」

キラキラ光るその目に悪い予感しかせん。

「坊は短い方が好きですよね?」

「・・・は?」

「せやから・・スカート丈」

「なっ!」

「そ、そうなのか勝呂!?お前まで志摩とおんなじ趣味して・・」

「なんやそれはそれで違うわボケ」

「で、どうなんです?(俺の)短いスカートと(奥村くんの)長いスカート、どっちがええですの?」

「それ俺も気になる!俺か?それとも志摩か?」

なにか、これは本当にスカートの話なんか?

ちゅうか、絶対片方喜んで片方喚くパターンやんけ。

チラリと2人の姿を見る。
一見同じように見えたそれらは細かい点で大きくちがった。
志摩のは、夏仕様なのか半袖の黒いワンピース。首にはチョーカー、首元は大きく露出し胸元に少しフリルシャツがあるようになっとって、下半分にはフリルエプロン、スカートはボリュームあるように下が何層にもフリフリんなっとる。手首にはリストバンドっぽいやつ、普段よく語っとった絶対領域の通りに長さが考えられた長めの白ソックス、黒い革靴。短い前髪をさくらんぼのパッチンする形のピンで止め、頭に白いフリフリのあれを付けとる。

一方奥村は、冬仕様なのか長袖の黒いワンピース。こっちはちゃんとしたフリルシャツがあって赤いリボンがよく映えとる。よく見るショルダータイプのフリルエプロンをし、長めとは言っても膝頭をちらつかせるスカート丈で、下にはボリュームを出すためのフワフワしとるやつ、脚には白タイツを穿き、靴は黒い革靴。上の方の髪を横にちょこんと結んどって、その赤い紐は胸元のと同じ色、頭に被さってるものは志摩のとは違い刺繍が入ってたり紐がついてたりする。

んー、そうやな。


「俺は、奥村ん方が好きやもしれん」


「・・・ッ!」

「はぁ、そうですのぉ・・残念ですわ。良かったなぁ奥村くん」

ボッと奥村が顔を赤くして反らし、志摩が残念そうにしつつ笑ってる。

「志摩のもええんやけど・・どうも露出が多すぎてあんま見れんのや、堪忍」

「ええですよ・・・せやけど、坊て案外むっつりなんですねぇ」

「ち、ちゃうわ、ど阿呆っ!お前がエロすぎなんや」

「褒め言葉ですわ。おおきに」

褒めたつもりはないんやけど、機嫌が直ったんやからそれでよしとしとく。

と思ってホッとしとると、横から服の袖をギュッと握りしめられたので見ると

「どした、奥村」

ポフッと頭に手を置くと猫みたいに目を細めて気持ち良さげになるも、ハッとしたかのように口を開いた。

「べっ・・別に、嬉しかないんだからなっ」

と言いながらも尻尾はフリフリしとる。

「あほか・・嬉しいなら嬉しい言え」

「・・ん、やだねっ!ふんっ」

そう言ってそっぽを向いてしまい、手が頭から離れる。

「ねぇ坊、俺も撫でて?」

「何やねん、うるさいのぉ」

「えっ!?ええじゃないですか。奥村くんだけご褒美あげるなんてズルいですよぉ」

「なにが、ご褒美じゃ!ただ撫でただけや」

「むーっ、坊のど阿呆っ」

バンッ

メイド服を揺らしながら飛び出してしまった志摩。

ハッとして、服あいつんとこだから、と追いかけていく奥村。


なんや、色々あったけど、終わってしまえば後の祭り。


「・・・今日は経唱えてから勉強せなな」

1人だけになった部屋はいつもの姿を取り戻したんに、煩悩を断つまで時間がかかった。


 

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