二粒の結晶。

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第0話
【叶わなかった約束】







「今日も楽勝だったな!」



「花香ちゃんのおかげだね」



「いや、私じゃなく二人が頑張ったからだよ」



「ふんっ、お前なんかいなくたって勝てるし!」



「んなっ!?」



「そんなこと言ってシュート外してたけどね、あつや」



「そうだそうだ!もっと言ってやれしろー!」



「それはにぃちゃんが邪魔したからだろ!」


「うわー、人のせいにしてるー」



「花香!!」



「あはは、ごめんごめんっ!二人ともスゴかったぜ!」



「ありがと、花香ちゃん!」



「…………けっ」



「「あ、あつや照れてる」」



「……照れてない!にぃちゃん!花香!!」



「まぁまぁ敦也。そう怒るなって」



「う……父さん…」



「おじさんもっと叱ってやって!」



「花香も調子に乗って…からかわないの」



「…はぁーい母さん」



「…ぷっ、あははっ!」



「笑うなよ、にぃちゃん!」
「笑うなよ、しろう!」



「ほんと息ぴったりね、あなたたちは」



「なっ!そんなのう、嬉しくないし!」



「そ、そうだ!おばさん変なこと言わないでください!」



「ふふふっ。ごめんね」



「花香、士郎くん、敦也くん。今日の試合は本当に凄かったぞ」



「お父さん…ありがと!」



「ありがと、おじさん!」



「ありがとうございます、おじさん!」



「だけど敦也、お前はもう少しみんなと協力したほうがいいと思うな」



「父さん…でもシュートを決めるのが一番カッコいいんだ!協力なんか…」



「だけどいくらシュートを決めても、ディフェンスがしっかりしてないと点を取られちゃうよ」



「チッチッチ、ミッドフィルダーが繋げないと、試合には勝てねぇんだ!だからミッドフィルダーが一番カッコいいんだよ!」



「「「…………ガルルル」」」



「それじゃあ、3人が揃えば“完璧”ってことだな」



「「完璧…?」」



「…そうか…3人揃えば…!」



「もっと強くなる…」



「もっともっと強くなって、完璧になる…!」



「やろう!俺たちは完璧になって、世界一になってやるんだ!」



「「あぁ!」」



「世界一かぁ、世界一になるのは難しいぞ!」



「絶対なってやるよ!」



「あぁ!ね、花香ちゃん!」



「おぉっ!がんばるから見ててね、父さん、母さん、おじさん、おばさん!」



「「「「あぁ/えぇ」」」」



「がんばれよ!三人とも!」







この約束が、
近いうちに破られるだなんて
幼かった私は
考えもしなかった。






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