二粒の結晶。

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第5話
【動き出す歯車】






「だからぁ!なんで着いてくんだよお前たち!」



白恋中の校舎にて。
吹雪と共に学校に着いた花香は、何故か一人で何かにそう怒り気味で叫んだ。しかも目線は下。



その視線の先には………。



「にゃー」



「わんわんっ!」



「チチチッ」



「着いてくんなってーの!」



先に教室に向かった吹雪の元へ急ぐ少女の後ろには、子猫と子犬に子リス二匹。



どれだけ追い払おうが、ちょこちょこと着いている4匹に彼女は吐息を嘆いた。



「はぁー…わーったよ…」



諦めたのか、彼女はしゃがんで「おいで」とめんどくさそうにしながらも、優しい表情で手を広げた。



その瞬間、4匹は彼女の手の中に飛び込んだ。かと思うと、子猫は左肩、子犬は右肩に器用にぶら下がり、子リスたちは頭の上にちょこんと乗った。周りから見れば、かなり異様な光景だ。



「ったく…また来るから待っとけって言ったのに…」



言うこと聞かねぇんだから、お前たちは。と、少女は4匹を叱る。だが4匹の甘えたな鳴き声とつぶらな瞳に負けたのか、



「…ま、来てくれて嬉しいんだけどさ」



フッと微笑みながら子犬の喉元を撫でる。子犬は気持ち良さそうに目を細めた。少女も怒ってはいたが嬉しそうだ。



「にゃーん!」「いてっ!?」「チチチッ!!」「いだっ!ちょっわかってるから!お前たちも撫でてやるから怒るな!」



子犬だけ撫でてるのが気に入らなかったのか、引っかいたりと怒って暴れる子猫と子リスたちと奮闘しながら、少女は教室へと足を進めた。



「落っこちないように、しっかり捕まってろよー」



この子たちが落ちないように気を配りながら歩く彼女は、やはり動物たちが好きなんだろう。







円堂「え…今いないのか?その2人…」



白恋中に訪れた円堂たちはというと、白恋のサッカー部員たちにフットボールフロンティアに優勝した雷門だ、と歓迎され、教室に案内されていた。



だが、北海道に来た目的の『吹雪士郎』と『神崎花香』がいなかったのだ。



瞳子「その2人は今どこに?」



紺子「“吹雪くんなら”もうすぐ来るよ!」



風丸「もう1人は?」



紺子「今はいないの!」




(間)





皆「「「えええええええええええっ!!?」」」



白恋「「「ビクッ煤I?」」」



驚いて大声を上げた雷門イレブンに、白恋イレブンは肩を揺らして驚く。しかし、それと同じくらい雷門も驚いていた。



ここまで来て、まさか一人いないなんて…誰が考えただろうか……。



円堂「なんでいないんだ!?」



紺子「えっと…旅に出るだとか…」



詰め寄ってきた円堂に戸惑いなからも紺子は答えたが、その答えに円堂は更に落ち込んだ。旅だなんて…そんなの今帰ってくる確率が低すぎる。



皆(((てか旅ってなんの旅だよ…)))



揃って(心の中で)ツッコんだ。



風丸「それじゃあ、その吹雪って人は?」



紺子「今は出掛けてるの!もうすぐ帰ってくるよっ」



「スキーするとか。ジャンプ、花香に5m負けたって言ってたから」「いやスケートだろ。次は4回転飛んで花香ちゃんを驚かすって言ってたし」「え、ボブスレーじゃないの?100km出るようになったって言ってた」



風丸「なんかすごい2人組だな…」



ウィンタースポーツも出来て、サッカーもうまい。どんな人物なのか、円堂たちはますます気になった。



──ガタッ



紺子「あっ!帰ってきた!」



「「「??」」」



廊下で物音…誰かの足音と影。紺子は誰なのかわかっている口振りで、扉の前まで走る。そして、明るい表情で話しかけた。



紺子「遅かったね、どこ行ってたのー?あのね、お客さんが来てるよ!」



吹雪「お客さん?」



見覚えのある男の子に、みんなは口を揃えて一驚。



「「「あ!!」」」



吹雪「あれ…君たち…」



「お客さんって君たちだったんだ」と、吹雪はへにゃりと笑う。



円堂「お前さっきの…『ブリザードの吹雪士郎』って、お前のことだったのか!?」



吹雪「うん、そうだよ」



にこり、としながら答えた吹雪。



吹雪と円堂たちは、ここに来る前に会っていた。
少女を迎えに北ヶ峰の近くまで送ってもらった吹雪が、ふもとまで歩いて行っていたとき、キャラバンが雪にタイヤをとられてるのを見つけ、助けたのが彼らの出会い。



だから、“さっき”と言ったのだ。



染岡「お前が熊殺しのか!?」



信じられない、という様子の染岡。確かに、吹雪の小柄な体型からはとても熊を倒せるようには見えない。



吹雪「あぁー…噂では大男って言われてるらしいけど…ガッカリさせちゃったかな。これが本当の『吹雪士郎』なんだ」



自己紹介らしきものをした吹雪に、染岡は気に入らないのかおもいっきり顔をしかめた。その時、



──ガラッ



「たっだいまぁー」


突然開いた扉と、明るい声。その入ってきた少女を見た雷門イレブンはぎょっとした。



その少女は、体のあちこちに動物を連れていたから。
少女は入ってきたと同時に、見かけない顔の円堂たちを見て怪訝そうに吹雪に尋ねた。



「誰だ?」



吹雪「お客さんだって」



「おきゃくぅ~?」



吹雪「そ。というか……またこんなに連れてきて…僕ダメだって言ったよね?」



「この子たちが追い払っても着いて来るから…」



吹雪「それでも連れてきちゃダメ。次は気を付けるんだよ、花香」



円堂「花香!?今、“花香”って言ったのか!?」



円堂たちが探してきた『神崎花香』と同じ名前の少女。もしかしたら……二人の会話を聞いていた円堂は期待を胸に、名前を聞いた。



円堂「もしかして…『花吹雪の神崎花香』か……?」



「あー…そんなこと言われてたな」



円堂の問いに、興味なさげに言ってから彼女はにっこりと微笑み、手を出した。



「私が『神崎花香』だ。よろしく」



──北海道へようこそ、客人。





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