二粒の結晶。

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第6話
【ライバル出現?】








「……紺子ぉー」



紺子「なーに、花香ちゃんっ?」



「いつまで引っ付いてんだ…」



紺子「ずうーーっと!」



「そりゃどーもありがとう」



私と士郎たち白恋イレブンは、雷門中からやって来た人たちのお綺麗な監督さん、瞳子さんに話があると言われ、グラウンドの近場に向かっていた。



瞳子さんお綺麗でやばし。目が向いちゃう。あ、目ぇ合った!………………そらされた何故に!!



そんでもって、いつまでも私に絡み付いて離れない紺子。嬉しいんだけど、今階段下りてるから危ねぇんだぞ。わかってんの?



烈斗「紺子ばっかりズルい! 花香!俺も俺も!」



「わーったわーった」



礼文「花香ちゃん、旅はどうだった?」



「それがいろんな奴とあってさ。仲良くなったやつもいたんだぁ」



珠香「花香ーっ!頭撫でて撫でて!」



「ねぇねぇ花香!」「花香ちゃん!」「花香ー!」



風丸「なんか…凄い人気だな」



円堂「あぁ…」



左右から花香に引っ付いて離れない紺子に烈斗、「よしよし」と頭を撫でてもらっている珠香に、楽しそうに旅のことを聞いてる礼文。これで終わりかと思えば、他の子たちも彼女を囲むように集まった。



そのあまりの人気ぶりに、円堂たちは驚きを通り越していた。



吹雪「花香はみんなに好かれているからね。旅から帰ってきたから尚更かな」



そう説明した吹雪だがその表情はムスッとしていて、あからさまに不機嫌だ。その彼がチラリと睨むように一瞥した方にいるのは、雷門の天才ゲームメーカー「鬼道有人」。鬼道は気づいているのか気づいていないのか、その視線には無反応だが。



訳はさっき教室であった出来事のせいである。



回想~



「私が『神崎花香』だ。よろしく」



円堂「おお!よろしくな、神崎!!!」



まさかこのタイミングで『神崎花香』が旅から帰ってくるとは思わなかった円堂たち。円堂は心底嬉しそうにしながら、差し出された彼女の手を取って大きく上下に振った。他のメンバーたちもよろこんでいる様子。



円堂「俺たち、お前らのこと探しに北海道にやって来たんだ!」



吹雪「僕たちを探して?」



「なんで?」



円堂「それが──」



「あ、ストップ!ちょっとタンマ」



円堂「えっ…わ、わかった…」



途中で止めてしまって、バンダナくんは少し不満げだけど、今はそれ所じゃない。



「士郎、パス!!」 「や、投げないでよ?」 「いいから、ほれ!」 「わっ、投げないでっていったのに!!」



身体中に乗っていた小動物たちを士郎に投げる。文句を言いながらもしっかりキャッチしてくれた。それがわかってたから投げたんだけどさ。



花香が小動物を手放したその瞬間……、



紺子「花香ちゃあああんん!!!」



「そら来たあああああ!」



予想通り、勢いよく紺子が飛び付いてきた。もうある意味突進だけど、それを受け止めて倒れないようにグッとこらえる。



紺子「お帰り!お帰りなさい花香ちゃん!!!」



「…あぁ、ただいま紺子」



本当に嬉しそうに言う紺子に、花香は暖かい笑顔で優しく頭を撫でる。和んだ空気が流れるが、それもつかの間。



烈斗「花香ーーーっっ!!!」



珠香「花香だぁぁーっ!!」



礼文「花香ちゃん!」



「「「花香!!!!」」」



「えっおい……んぎゃああああああああああ!?」



──ドサァ!!



続々と飛び付いていく白恋イレブンに、花香は派手な音をたてて倒れた。吹雪はそれを苦笑いで眺める。助けないのか、なんて野暮なことは誰も聞かない。



そして覆い被さったまま、白恋イレブンはワイワイと喜びに浸り出す。が、忘れてはいないだろうか。花香か下敷きになっていることを。



「ちょっキブ!!ギブギブ!早くどけろお前らあ!!」



「「「「……あっ」」」」



「あっ」じゃねぇよ!人の上に乗っかっといて何のんびりと話し合ってんだ!死んじゃうんだけど!?



やっとのことで花香の上から退いたみんな。唯一その中に入っていなかった礼文が、彼女に手を出して起き上がらせた。



「さんきゅ、礼文」 「いえいえ」 「…てめえら!全員で飛び付いてきやがって…私を殺す気か!?」 「「「ごめんなさい…」」」 「ったく。…迎えてくれたのは嬉しいけどな」



ほんっと、みんな相変わらずだ。温かく迎えてくれたことに嬉しく思いながらみんなの顔を確認。久しぶりだなーほんと。



服に付いた汚れをはらって、何の気もなくバンダナくんの仲間たちを見てみる。ゆっくりと見回して、ある所で止まる。そこには、私がよく知っている人物と瓜二つな子が。その子も私の視線に気づいたのか、バチリと目が合った…はず。もしかして…いや、もしかしなくても…



「君……有人、か?」



鬼道「………あぁ。久しぶりだな、“花香”」



「「「「……え"っ!?」」」」



声を揃えて驚く雷門イレブンは全員、鬼道の方へ振り向いた。今……鬼道は何て言った?久しぶり?しかもお互い下の名前で…?



少し…いや、結構なぐらい混乱状態な円堂たち。確認のため花香の方に向き直したが、何故かそこに彼女の姿がなく、ドサァっとまた派手な音が後ろから聞こえ、みんなはその方に目を向けた。



そこには、消えたはずの花香がどういうわけか、鬼道に馬乗っている光景があった。



鬼道「…っ」



「有人だ有人だぁ!!久しぶりだな!えっなんでここにいるんだ!?つかお前雷門って…帝国じゃなかったのかよ!大体ここ北海道だし!もしかして私に会いに来たとか?うっわー嬉しいなぁっ!でも北海道までわざわざ?私そういうの嫌いなんだよ重いの大っきれぇ!ってことで帰れいややっぱ帰んな!あっマントオレンジから青なってるな!オレンジも似合ってたけど青もいいねぇー!冷たい有人に合ってるぜ!有人が冷たいって言ってるみたいだって?その通りだってーの!あっ幸次郎たちは元気か?そういえば『まいはにぃー次郎』とは一緒じゃねぇんだな!相変わらずの美しさなんだろうなぁ!お前は相変わらずの変態ゴーグルだな!ぷぷっ。てか久しぶりだな有人!何しに来──」



鬼道「黙れ」



「う"ぉ!!!」



満面の笑みで乗っかったまま、更にノンブレスで勢いよく思ったことを口にしていく花香に、鬼道は眉間にシワを寄せながら頭を殴った。



だが、そのお陰で花香はピタリと止まり、変わりに今度は涙目で鬼道を見下げる。



ちょっ…何でこのタイミングで殴んだよ…  煩かったからな。本気で一度黙れ。  そんなウザそうな顔されてもだな。  ウザそうじゃない、ウザいんだ。  …久しぶりだってのに毒舌。



なに、なんだよ。有人は私と久しぶりの再会だってのに嬉しくないのかよ。そりゃ有人がいきなり「うわぁー花香だあー!会えて嬉しいなぁー♡」とか言ってきたら怖気が立つけどさぁ……ちょっとくらい喜んでくれてもいいんじゃね?ねぇ、よくね?



鬼道「不満そうなところ悪いが早く退けろ。重い」



「起こして」



鬼道「…………はぁ」



溜め息つきながらも、有人は手を引き起こしてくれた。こういうところは紳士なのに。サディストなんだよ、有人くんは。優しいときもあるけど、そんなもん極めてまれだし。



「…ま、とりあえず───会えて嬉しいよ、有人」



鬼道「…………俺もだ」



「えっ…」



鬼道「なんだその『化け物でも見た』ような顔は」



「だって…ゆ、ゆーとがデレた…だと!?」 



鬼道「失礼だなお前」



そんなこと言われてもほんとのことだし?
そう言いながら、有人は手を出す。また殴られるのかと思って、ほぼ反射的に目を瞑ったけど痛みは来ない。来たのは頭に暖かい温もりだけ。そっと目を開けると、有人は優しい表情で私の頭を撫でてくれていた。元気そうでよかった、と。



「………へへっ」



鬼道「なんだ」



「んーん、別にぃー」



嬉笑いをしながら、「うー」と気持ち良さそうに花香は目を細める。まるで猫みたいだ。それを吹雪が不服そうに見ているが……。そこに痺れを切らしたのか、円堂がどういう関係なのか説明してほしいと頼んだ。



鬼道「……花香とは、中学一年のときの友人だ」



「はーい、友人でーす」



円堂「へぇー…そうなのか……………………って、」



「「「「ええええええええ!?友人んんんんん!?」」」」



──キーンっ…



「…っうるっさ」



余りの大きな声に、花香は耳を塞ぐ。鬼道も煩かったのか、少し眉を歪ませた。
なんでみんな驚くんだよ?友達なのがそんなにおかしいのか。



円堂「じゃ、じゃあ!神崎は帝国学園だったってことか!?」



あぁ…そっちな。



「そうだぜー」



鬼道「強制的だかな」



風丸「強制的?」



そう言って首を傾げるのは青色のポニーテールくん。うわぁ!かわいい!というかお綺麗!ちょっと後でナン…げふん。話しかけよっと。



「そうなんだよ、びゅーてぃーなお方!」



風丸「び、びゅーてぃー……」ガーン



鬼道「お前は少し黙っておけ。すまない、風丸。

………影山が、当時サッカーセンスが高かった花香に目を付けてな。権力を使って強制的に帝国に連れて来たということがあったんだ」



「ちょっと待て、当時って何。それじゃまるで今は低いみてぇじゃん」



鬼道「煩いやつだな。細かいことは気にするな」



「十分太い話なんですけど」



吹雪「って言っても一年の途中で行って二年生のとき帰ってきたから、半年くらいなんだけどね」



「こら士朗、話を進めないでくれるかい」



円堂「そうなのか…」



「おいおい、聞いてる?」



円堂はこの短時間で早くも花香の扱い方がわかってきたらしい。



吹雪「うん。でも帰ってきたときは「帝国ウザかったから抜け出してきたー」ってあっけらかんに言うものだから、本当に驚いたよ」



「ソンナノシラネェ」



紺子「それからは、この白恋中の学生ってことなの!」



円堂「なんか…色々大変だったんだな…」



風丸「影山は追って来なかったのか?」



「あぁ。逃げたやつに興味なかったんじゃね」



自傷的な言い方だが、花香は何故か勝ち誇ったように笑みを浮かべた。



瞳子「…あなたたちが噂の2人ね?」



なかなか進まない話を進めるように出で来た瞳子に、吹雪は誰かと首を傾げる。花香が目をらんらんと輝かせているのには気づかないふりだが…。



吹雪「えーっと………、」



瞳子「私は吉良瞳子。雷門中サッカー部の監督よ」



吹雪「監督さん…僕たちになにか用でも──」



「瞳子さんって言うんですか!容姿だけじゃなくて、名前までお綺麗ですね!!!」



瞳子「……」



吹雪「…すみません、気にしないでください」



瞳子「え、えぇ…」



吹雪「それで、僕たちになにか用──」



「瞳子さんは何歳なんですか!?お綺麗ですからきっと若いのでしょうねっ!!!」



吹雪「…僕たちになに──」



「独身!?独身ですか!?だったら私がもらってあげますよ!!」



吹雪「…僕た──」



「あっでもそれは流石に無理か…、だったらせめて妹に……!!!」



吹雪「………、」



「なんだったら娘にし「花香」



いつもよりトーンの低い吹雪の声に遮られ、花香はビクリと肩を揺らして静かに彼の方を向いた。



吹雪「僕が言いたいこと……わかるよね?」



ニコリと笑う吹雪だが、目が全く笑っていない。しかもかなり機嫌が悪そうだ。それに気づいた花香は、冷や汗を流しながら戸惑いがちに頷いた。



「あ、あぁ……ごめん士朗…」



((((神崎が負けた…!!?))))



会って数十分しか経ってないが、花香が自由奔放で破天荒だと理解し始めた雷門イレブンたちは、暴れ馬の彼女が言うことを聞いたのに驚き、一言で黙らせた吹雪に感心した。



吹雪「ハァ…………すみません、瞳子さん」



瞳子「気にしてないわ」



吹雪「それで、僕たちに何か話でも…?」












ということがあり、花香たちはサッカーの話だということで外に向かっていたのだ。




 

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