二粒の結晶。
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第18話
【二人の関係性】
円堂「おっ、吹雪!おはよう!」
吹雪「おはよう、キャプテン」
翌朝のグラウンド。円堂を含めほぼ全員が集まってる中に、吹雪がやって来た。彼は一通りみんなに朝の挨拶をすると、キョロキョロと辺りを見回して「あれっ…?」と呟いた。
吹雪の様子に気づいた円堂は、
円堂「吹雪?どうかしたのか?」
吹雪「花香、来てなかった?」
円堂「神崎…?アイツならあそこにいるぞ!」
そう言って指差した方には、コソコソと忍び足で逃げようとしている花香の姿。
「お、おい円堂!!何で言うんだよおぉ!!!」
円堂「だ、駄目だったのか…?」
「あぁ駄目だね大駄目だね私の死亡フラグ立てちゃったね!!
あ、円堂名前下で呼べって!」
円堂「…あ、そうだった!!」
「忘れんなよ!私苗字で呼ばれるの他人行儀な感じでゾワゾワするんだからさぁ!」
円堂「悪い悪い…次からは下の名前で呼ぶ!」
「約束な!
───ってこんな事してる場合じゃねぇ!!」
逃げなければッッ!!
慌ただしい会話(花香が一方的に)をしてから走る体勢になったが、ポンッと自分の方に乗せられた手によってそれは中断された。
瞬間サーっと顔から血の気が引いていく彼女。恐る恐る振り返る。
「シッ…士郎さん…ッ!」
吹雪「おはよう、花香」
「オハヨウゴザイマスゴメンナサイ!!!」
吹雪「花香…?」
外国人の日本語覚えたてのような口調で挨拶をした花香は、肩に置かれた手を下ろさせるとそのまま流れ作業で頭を下げた。吹雪は訳がわからずキョトンとする。
士郎の反応が良くねぇ…頭下げるだけじゃ駄目なのか…!?やっぱスライディング土下座して謝った方が…!これでせめて必殺技100連発受けさせられるくらいにまで収まってくれれば…ッ!!
これから彼女は一体何をされるというのだろうか。
吹雪「……何について謝ってるのかよくわからないけど、はいこれ」
「…………これ……私のスノボー…?」
吹雪「そう。玄関に置き忘れてたよ?あんなに叔母さんと一緒に注意したのに」
皆((((玄関…?))))
「さ、さんきゅ…」
吹雪「どう致しまして」
と、士郎はいつもと変わらない笑顔を見せる。家を出る前におばさん持ったか聞いてくれたのに…なんで忘れたんだろ。次からは気をつけねぇと。
……イヤイヤイヤそうじゃなくて!!
謝ったのに特に反応しなかった…どういう事?おかしいな………あれ?ん?え?ちょ、パニック。
………本人に聞くのが早いな。
「あのさ…士郎」
吹雪「何?」
「怒ってねぇの…?」
吹雪「なんで?」
「だって私…士郎の事起さなかった挙句、放って先に学校行ったから…絶対怒ってるって思って…その…、」
しどろもどろする花香を見て、吹雪は「なんだ、そういうことか」と眉を下げて微笑。
吹雪「別に怒ってなんかいないよ」
「ほ、ホントか…?」
吹雪「ほんとほんと。花香が僕を放って行くことは今日だけの話じゃないし、もう慣れたから」
「…私そんなに士郎のこと放って行ってる?」
吹雪「まぁ……週四回は」
「殆んどじゃんか!?」
結構置いて行ってたんだ…士郎のこと…、数えてなかったから知らなかった、何かショックだなぁ…。
風丸「あのさ…ちょっといいか?」
「ん…?」
うぁー、と落ち込んでいる花香に、風丸が控えめに話しかける。彼は自分の後ろにいる雷門イレブン一同を一瞥してから、恐る恐る口を開いた。
風丸「神ざ………………っ花香と吹雪ってどういう関係なんだ?」
「関係…っていうと?」
風丸「だから、その……………吹雪と……こ、…こい…っ…」
「「??」」
言いづらそうにごもる風丸に私と士郎は顔を見合わせて首を傾げる。こい……なんだ…?
「何を言いたいのかわかんねぇけど、私と士郎は幼馴染みだぞ?」
「「「「幼馴染み!?!?」」」」
「あぁ。って言っても、一緒なのは七歳からでそんなに昔からじゃねぇけどな」
一之瀬「こ、恋人じゃなくて?」
「……いやいやいや。誰がそんなガセネタ流したの」
風丸「玄関に忘れてたとか、起こすの忘れたとか言ってたけど一緒に住んでるのか…?」
「家庭の事情ってやつでなー。住まわせてもらってるんだ」
土門「じゃあホントにただの幼馴染みなんだな」
「ただの、とか言うなよ土門。士郎は私の“大切な”幼馴染み、私の半身なんだ!」
土門「そ、そっか。悪い悪い…!」
吹雪(僕としては、そろそろ”幼馴染み“から進展したいんだけどなぁ…)
土門に必死に言いながら詰め寄る花香を見ながら、吹雪は複雑そうに笑う。幼馴染みというのも難しいものだ。
風丸(そうか…幼馴染みなんだな…)
鬼道(…なるほどな)
「なんだそうなのかー」と盛り上がっている花香達だが、一方では風丸がホッと胸を撫で下ろし、鬼道が怪しげに笑みを浮かべていた。その表情から見て花香のことについてなのは間違いないが……。
「よぉーし!んじゃゲレンデ行こうぜ!」
彼女が彼たちの気持ちに気づくときはいつなのか…。