『道標』
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第7話
【フィフスセクターとシード】
松風「すみませんキャプテン。俺、フィールドに立っていても何一つ役に立てませんでした…」
ベンチで休憩していた神童に、申し訳なさそうに松風が謝りを入れる。
松風「だけど俺、サッカー部を取られちゃうなんて嫌です!」
神童「落ち着け。俺だってサッカー部は渡したくない。だけどあいつら半端じゃない。悔しいけど、俺たちを凌ぐ力だ」
神童が必死な剣幕の松風を宥めるように言うが、実際彼も同じ気持ちであり、焦燥していた。
ここはサッカー棟。
真言が去った後の松風は、現れた雷門イレブンと、剣城と名乗ったシードと共にサッカー部の命運をかける試合を行っていた。
キャプテン神童たちの相手は剣城を含め、新たな雷門イレブンと名乗ったチーム。フィフスセクターの決定で雷門イレブンは一新されることになったため、この試合に負けるとみな退部させられることになっていた。
だからこそ神童たちは必死に阻止しようとしているのだが、シード剣城たちの圧倒的な力の差に追い込まれているところだった。
三国「これがフィフスセクターのやり方だ」
松風「フィフスセクターって……?」
なんのことかわかっていない松風。神童が「まだ知らなかったんだな」と、説明を始める。
神童「10年前、日本は少年サッカー世界一に輝いた。それからというもの、サッカーの人気が一気に高まりサッカー部の強さが学校の社会的地位を決めるようになってしまったんだ」
強ければ栄え、弱ければ潰れる。サッカーが人の価値を決めるようになった。
神童「お前だって、サッカーが強いから雷門に入って来たんだろ?」
松風「強いから…?い、いえ、違います!俺、雷門中でサッカーするのずっと憧れていたんです!」
昔、松風を助けた恩人が残していったサッカーボール。そのボールに青のペンで稲妻のマークが描かれていた。この雷門中のシンボルといえよう稲妻が。
神童「憧れか……そんなことを言っているのはお前だけだ!」
今は内申がよくなるからと、サッカーをやるのがほとんどだ。
神童「結果が全てさ。サッカーが弱ければ価値のないものとみなされる。
その時代を救済するために作られたのがサッカー管理組織、フィフスセクターだ」
黙っていた監督の久遠が続けて、
久遠「管理と言う名のもとに勝敗までもを意のままにする。逆らえば報復が待っている。各学校のチーム構成、選手の育成、全てにあたるものを管理するようになった」
そしてシードとはそのフィフスセクターの配下であり、サッカーの英才教育を受けたエリートのこと。凄まじいサッカーセンスを持ち、ほとんどの学校のサッカー部に紛れ込み操っている。
今までシードが干渉していなかった雷門イレブンにも、ついにその時が来てしまったということだ。
音無「円堂さんたちがやってきた、あの熱かったサッカーを取り戻すことは出来ないんでしょうか…」
久遠「最早これはサッカーではない。サッカーは、支配されてしまった」
松風「これがサッカー…そんな…」
絶望したような声で松風はフィールドを見つめる。
胸をふくらませていたこれからの雷門イレブンとしてのサッカー生活は、想像していたものとはまるで違った。
神童「だけどな、たまにはまともな試合だってあるんだ」
そんなときは、思いっきりサッカーが出来る。
神童はそういうと、重々しくフィールドへと足を進めた。
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