二粒の結晶。
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第9話
【花吹雪の神崎花香】
花香に吹雪、白恋イレブンと雷門イレブンがそれぞれポジションについたところで、『ピー』っとホイッスルが鳴った。
角馬『さぁ、試合開始です!!実況は私、角馬啓太でお送りします!』
おっ、試合開始か。
雷門からのキックオフ。ボールは染岡が受け、攻めようとみんな一歩進めたところで驚いた。雷門の見ている先にいるのは吹雪と花香。
円堂「吹雪と神崎がディフェンスに!?」
そう、雷門イレブンが驚愕しているのは二人のポジションだ。円堂たちは凄腕のストライカーがいると聞いたから北海道に訪れ、二人に会ったというのにその二人がフォワードでなくディフェスに…。
染岡「ふざけんな!あいつらはフォワードじゃねーのかよ!!」
一ノ瀬「それに神崎さんが腕に付けてるあれ、キャプテンマーク…だよね」
土門「てことは…キャプテンかよ!?」
紺子「あ!今日は花香ちゃんがキャプテンなんだ!!」
「「「「今日“は”?」」」」
礼文「あぁ…うちのキャプテンは、その日の気分で花香ちゃんか吹雪くん、どちらかに決まるんだ」
秋「その日の気分って…」
((((そんなんで大丈夫なのか白恋は…))))
酷く不安になった雷門。
染岡「なら、あいつらがディフェンスについてるのはなんなんだよ!!」
気に入らないように怒鳴る染岡に「今は“まだ”ディフェンダーなんだ」と白恋のメンバーが言った。
鬼道「今はまだ…?」
染岡「どういう意味だ!!!」
二人のことがいけすかないのか、険しい顔をしている染岡。ホイッスルが鳴ったのに中々始まらないため、流石にイライラしてきた花香は、
「後で嫌でもわかるんだからさっさと始めようぜ染岡クン。まぁ、私のディフェンスは突破できないだろうけどな」
染岡「んだと!?」
嫌味に言われた染岡は更に憤慨し、その怒りをぶつけるように花香に向かって走った。
してやったり、と言うように口端を上げる花香を横目に、吹雪は眉を下げて微笑。
吹雪「悪い顔。別に皮肉らなくてもよかったんじゃないの?」
「きゃっちあんどりりーす!!士郎には負けるよ…」
吹雪「人聞き悪いなぁ」
クスクス笑う士郎。よくもまぁぬけぬけと…。自覚してるから、たち悪いんだよ。
染岡「なに余所見してやがる!!」
「おっと…怒られちった。
───じゃ、先制は私から行くぜ!」
言うが早いか。吹雪の返答を聞く前に花香は染岡の元へ向かっていた。せっかちだなぁ…全く。
荒々しく攻めてくる染岡の前に紺子と烈斗が止めに入る。
染岡「どけえ!!」
が、あまりの気迫に怯えて半場吹っ飛ばすように抜かれた。それを見て花香はムスッと眉間にシワを寄せる。
「うちのかわいい子達を…」
染岡「お前のディフェンスなんか軽くあしらってやらぁ!!」
「はっ、…出来るもんならなぁあ!!」
吠えると花香は手を天に向けて上げると、振りおろして掌を地面に叩きつけた。
すると、手が地面に触れた部分から染岡に向かって地面が凍り、一本の筋を作っていく。
染岡「な、なんだ…!?」
そのまま彼は凍った地面に足を踏み入れた。とたん一瞬にして彼の足が凍りついた。身動きがとれなくなり、染岡は足を動かし抵抗するが全く効果がない。
「“アイシクルランス”」
下ろした右腕を振り上げる。瞬間染岡の足元が青く光り、巨大な氷柱が地面から現れ染岡を吹き飛ばした。
染岡「ぐわあぁ!?」
円堂「染岡!!!」
「ほらな、突破できなかっただろ?」
角馬『神崎強力なディフェンス技で、染岡からボールを奪ったぁ!!』
転がってきたボールに足を乗せる。意地悪げに笑う私を染岡は悔しそうに睨む。…ただでさえ顔面こえぇのにそんな顔したら女の子たち逃げちゃうよ。
塔子「凄いディフェンスだな…」
鬼道「しかも、あの技はまだ途中だ」
塔子「途中って…どういうことだよ…?」
鬼道「あの氷柱が避けられたときにわかるだろうな」
塔子「つまり…さっきのディフェンスを避けろってことか」
土門「そんなことできるやつがいるのかよ…」
感心する人からあのディフェンスを破ることが出来るのか不安になる人。花香はそんなみんなを見てニコッと笑い、ドリブルをしゴールに上がりだした。
風丸「行かせない!」
「だが断る!」
いたって真面目なやり取りをして足の先に力を入れて地面を蹴る。
風丸「なにっ!?」
突風のような速さで一瞬にして抜かされ、風丸は目を見開いて花香の方へ振り向く。元陸上部のエース。自分で言うのもあれだが、スピードには自信があった。それをこんな意図も容易く…。
塔子「じゃあ、これでどうだっ!」
「!!」
順調に上がる花香に、塔子に鬼道・土門・一ノ瀬が同時にかかる。流石に驚いた花香は表情を変えたが、足は止めない。
「いやぁ…まさか四人で来るなんてな…。けど、負けねぇぜ!!!」
ワクワクとした表情で言った彼女は飛び上がると、ボールにかかと落としをして地面に叩き落とした。
「”ホワイトアウト“」
するとそこから大量の雪が飛び散り、一瞬にして辺りを包み込み吹き荒れ始めた。
4人「「「「なっ!?」」」」
4人はその中に巻き込まれる。視界が悪くなり、ふぶくその中で目を凝らして花香を探す。が、一面真っ白で何も見えない。
そんな中鬼道が人影を見つけ、そちらに向かって走り出す。
だが…、
「ざーんねん♪もう遅いよ」
とっくに花香はその空間から外に出てゴールへと上がっていた。無邪気に笑う彼女に、鬼道は去年の彼女とした帝国でのサッカーを思い出し、目を細めた。
壁山「ここからは通さないッス!!
“ザ・ウォール”!!」
「だが断るV2!」
いたって真面(略)をした私は足の間にボールを挟んで上にじゃーんぷ!壁山のディフェンス技ザ・ウォールを飛び越えた。
予想外のジャンプ力に雷門イレブンは驚愕。さらにヘルプに入っていた土門をも、ジャンプをして交わした。
飛んで着地すると、またすぐ飛んで着地の繰り返し。
まるで花びらが吹雪いているように可憐に舞う花香はとても美しく、フィールドにいる者全てを魅了した。この独特なプレースタイルが『花吹雪の神崎花香』と呼ばれるようになった理由だ。
円堂「来い!神崎!!」
「お望み通りに、円堂!」
空中にいる花香は、バックドロップ状態のまま懇親の力でシュートした。
円堂「“ゴッドハン──”」
そのまま彼女のシュートは、円堂の必殺技を出させる暇も与えずにゴールした。
角馬『ゴォォル!!!先制したのはなんと白恋中だぁぁ!!!』
円堂「なんてシュートだ…速すぎて必殺技が出せなかった…」
「「「「凄い…」」」」
守り・攻めの全てをこなした花香に、みんなは感心するしかなかった。
「先制点、頂いたぜ雷門!!」
イェーイ、と雷門イレブンに向かってピース。あ、春たち見てくれてたかな。
「春ぅー!!秋ー!!お嬢ー!!見てくれてたかぁー!!」
秋「ちゃんと見てたわよー!」
春奈「花香先輩かっこよかったです!!」
夏未「だからお嬢って呼ばないでちょうだい!////」
「愛してるぜ!えんじぇうたちー!!」
夏未「聞いてるのかしら花香!」
もぉー…お嬢はほんとツンデレだな…。それがまた可愛いんだけど。
ベンチに座ってるえんじぇうたちに大きく手を振ってラブコールしてると、円堂が叫んできた。
円堂「神崎!!お前すっげぇな!!今はゴールを許したけど、次は絶対止めてやるから、必殺技で来いよ!!」
興奮ぎみの円堂の瞳はゴールされたというのにキラキラとしていて、心の底からサッカー好きなんだということ伝わってくる。けど…私だって負けないくらい大好きだ。サッカーは私の『友達』だから。
「さんきゅ!!でも、士郎の方がもっと強いぜ!」
何せ、腹黒皇子さまだからな。