二粒の結晶。
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第19話
【総理大臣の娘】
「あ"ぁー…腹減った…」
三十回噛むという試練を乗り越え食事を済まし、現在夜。
テントに寝てる天使たちを起こさないようにしながら、ソっと外に出ると北海道特有の寒さが体を震わせた。
本当は家に帰っても良かったんだが、自分だけ何か悪いしみんなと過ごすことにしたんだ。
でも、キャラバンでみんなと寝ようとしたら何故か天使たちに必死に止められた。あの子達が言うには、男と女は別々に寝なきゃいけないらしい。
「………意味分かんね」
心底意味がわからない。なんで駄目なの。あんなにいい奴らが、そんなやましい事を考えてるわけ無いだろうに。第一私いつも士郎と隣のベッドで寝てるし、逆に一緒じゃないと不安になるんだよ。証拠に今目ぇギンギン。
まぁ…あれだけ反対されたからもう諦めたけど。春を抱きしめて寝よう。というか日替わりでお願いします。女子皆を抱きしめて寝たい。
そういえば女子で思いだしたけど、塔子が総理大臣の娘さんってのには驚いたなぁ…。しかも知らされたのはついさっき寝付く前のテントで。
「何で駄目なんだよー!!」
秋「駄目ったら駄目なの!」
「理由は!理由を言ってくれよ!」
夏未「そんな事言わなくてもわかるでしょう…」
「ごめん、わかんねぇ」
秋「あのね…」
春奈「花香先輩があんなに沢山の男の人たちの中にいたら、絶対良くないことが起こりますよ!!」
「はぁ?んな事起こるわけないだろ…えんじぇるたちは過保護だねぇ」
秋「花香ちゃんは危機感がなさすぎるの!」
「いや私は──」
夏未「そうね。貴方は自分が思ってるより綺麗で美人なんだから、もっと自覚した方がいいわ」
「お嬢が突然のデレ」
春奈「そうですよ!それにあっちにはお兄ちゃんが居るんですから尚更危険です!」
「実の兄に酷ぇよ春」
秋「とにかく駄目だからね!」
「そこを何とか!」
「「「駄目よ/です」」」
「…いいじゃねぇか!私は士郎と一緒に寝たいんだ!!」
塔子「その意見賛成!!」
「「「うわぁ!?」」」
「だろだろ!?」
塔子「おう!私だって円堂たちと寝たい!」
秋「貴方の場合は“円堂くんと”でしょう…」
「そうだよなぁ!やっぱ皆で寝る方がいいよな!」
塔子「仲も深まるし!」
春奈「みんなと寝たら仲が深まるんですかね…?」
夏未「そんなこともないと思うけど」
「おっ、君話がわかるねぇ!
確かー…財前さんだったよな?」
塔子「塔子でいいよ」
「じゃあ私も花香で。よろしくな塔子」
塔子「よろしく、花香」
「「らんらんらーん♪」」
春「…意気投合してますけど。踊ってるし」
秋「二人は特殊なのよきっと…」
夏未「手に負えないわ…」
「よし、じゃあ寝ようぜ!」
「「「えっ」」」
秋「あんなにキャラバンで寝たがっていたのに!?」
塔子「なんかもうどうでも良くなった」
「まあ塔子やえんじぇるたちが居てるし我慢することにするよ」
塔子「っという事だ寝ようぜ!」
「寝よう寝よう!」
(((あれだけ騒がせといて…)))
「あ、そういや塔子。君の名字聞き覚えがあんだけど、私たち何処かで会ったことあるか?」
塔子「ないよ。けどパパが総理大臣だからな。殆どの人は聞いたことあると思うぜ!」
「あぁなるほど、お父さんは総理大臣か。道理で聞き覚えがある訳だな」
「「「……」」」
「………」
「「「………」」」
「………」
「「「………」」」←耳を塞ぐ
「えええええええええ!?!?総理大臣んんんんんん!?!?!?」
塔子「ベタな反応ありがとう」
「は、ちょっ、えぇ!?お父さんが総理大臣って!てことは塔子は総理大臣の娘!?いやいやいや君こんな所で何してんだ!?あ、いや何してるのですか!?」
秋「花香ちゃん落ち着いて…」
「これが落ち着いてられるか!何、てことはえんじぇるたちは知ってたってことか!?うわーもっと早く言ってくれよ!そうすりゃもっと礼儀よくしたってのに!」
塔子「その事なんだけど、」
「はいっ!?」
塔子「これからも普通に接して欲しいんだ」
「はっ?!いやでもそれは…」
塔子「円堂たちだってそうしてくれてるし、偉いのはパパであって私じゃないんだからさ」
「そりゃそうだが…」
塔子「頼むよ、花香。私はみんなと友達で…仲間でいたいんだ」
「塔子…」
塔子「花香…」
「…………………わかったよ」
塔子「!!ホントか!?」
「あぁ。当の本人が言ってるんだからな。それに、女の子に頼まれちゃ断れねぇよ」
塔子「男前だな(笑」
「だろ?(笑」
塔子「…ありがとな、花香」
「…どういたしまして、塔子。
これからよろしくな」
塔子「…あぁっ!」
………ってことがあった。
本当に吃驚したよ…総理大臣の娘さんとサッカー出来るなんて夢にも思ってなかったからな。これは一生の思い出になるぞ。
あ、あと春奈が有人と兄妹だったってのにも驚いたな。春奈の方が断然いい子だ。有人に聞かれたら殺されるだろうなこれ。