二粒の結晶。
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第25話
【和解】
「そろそろマズイな…」
私が一瞥した方にあるのは『2−1』と記されたスコアボード。
やっとの思いで初得点した私達だったが、開始早々ジェミニストームの猛攻撃に隙を突かれ、得点を許してしまったのだ。
だが、奴らのその表情は初めの時にはなかった焦燥が感じられた。
私たちの力が奴らに劣っていないと証明できているんだ。
一歩前進。といいたいところだが、このまま負けてしまっては何の意味もない。みんなの特訓を無駄にしないためにも、この試合は…!
花香は苛立ったように舌打ちをする。
「さっさとしろよ…いつまでも待てねぇぞ…っ」
──…………『アツヤ』。
花香は“吹雪”に目を向けながら言った。
塔子「“ザ・タワー”!!」
暫くの競り合い、塔子のディフェンスで染岡にボールが回る。やっとのことで雷門の反撃だ。
染岡(この試合、勝つためには…)
自分の横を走っている吹雪に目を移す。染岡の瞳は決心していた。
レーゼ「止めろ!!シュートを打たせるな!!」
レーゼの指示で染岡にディフェンスが付く。自分の周りにディフェンダーを引き寄せ、逆サイドに意識を反らさせた染岡は。
染岡「いけぇ!吹雪いぃ!!」
『吹雪』にへとパスを出した。
吹雪「染岡…!?
──……あぁ!!」
嬉しそうに笑うと、吹雪はシュート体制に。ノーマーク、絶好のチャンス。
吹雪「吹き荒れろ!!“エターナルブリザード”!!」
放たれたそれは強烈な吹雪を発生させ、キーパーを吹き飛ばすとゴールを凍らせた。
角馬『ゴォォオル!!!凄まじい威力!エターナルブリザードォ!雷門追いついたぁあ!!』
ここに来て染岡と吹雪、二人の団結よって一点を返した。
点が入ったこと、そしてあの険悪な仲だった二人が協力をしたことに雷門一同は声を上げた。
吹雪「ナイスアシスト」
すれ違いざまに染岡への一言。一見無愛想で感じが悪く見えたが、これが吹雪なりの心を許した接し方なのだ。
それを理解できた染岡は、静かに笑みをこぼした。
「お前も成長したなぁ」
ポジションへと帰る俺に声をかけてきたコイツの表情は、にまにまと気持ち悪く頬が緩んでいる。
吹雪「うるせぇ、ほっとけ」
「いやいや。お前があの時染岡に協力したから今この結果なんだ。私は嬉しく思ってるんだよ」
吹雪「ハッ、そうかよ」
言ってそっぽを向いたらの花香の笑みが更に深くなった。あぁー、ったく反応がいちいちうぜぇんだよコイツは。
(素直じゃねぇなぁ…)
二人の関係の進歩にいつのまにか親のような気持ちになってしまっていた。
吹雪「…さっさと帰れノロマ」
「ノロマじゃねぇって言ってんだろ」
ピキッと青筋が立つが、平静を保つ。
ま、余計なこと言い過ぎて機嫌を損ねちまったらめんどくさいし、戻ろ。
吹雪「……花香」
くるりと踵を返せば呼び止められ、何だと振り返る。
アツヤはさっきの時と同じ、真剣な表情で目を合わせてきた。しばらく見つめあって、やつは静かに口を開く。
吹雪「わかってんだろうな」
「は、…ったりまえ。何の為に黙って指くわえて見てたと思ってるんだよ」
そうかよ。とアツヤはニヤリと口端を上げる。
うわぁー、悪い顔だ。
そう思ったけど、笑い返した私の顔も似たようなものだろうな。