『道標』

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第2話
【あの白髪パンダめ】








「はあぁ!?理事長がいないいい!?」



職員室に響きわたった私の声。



うるさいとわっけぇ教師に注意されたが、そんなことはどうでもいい。



「何でいないんっすか!理事長って大体は部屋に閉じこもって暇してるんじゃないのかよ!」



教師「偏見だな、失礼だぞお前。


…さっき緊急事態が発生してな、理事長が直接出向かったんだ」



男の子と別れた私は、迷いに迷ってやっと探し当てた職員室で予想外の事にプチパニックを起こしていた。



「何でも緊急事態って言えば許してもらえると思ったら大間違いっすよ、センセ」



教師「バレたか」



ニヤリと口端を上げる教師。これはあれだ、何人もの女を匠に堕とす詐欺師の笑い方だ。



「センセ、性格悪いだろ」



教師「いいや?優男とはよく言われるが」



「その人の目腐ってんじゃないっすか」



教師「馬鹿言え、美人だったっつーの」



「面食いか」



教師「そうだけど?」



「最低だなアンタ!」



教師「モテる男は辛いんだよ」



「冗談は顔だけにしてくだせぇな」



教師「馬鹿にするなよお前。この顔で食ってけるくらいだっての」



「うわぁ…ナルシスト引くわぁー…」



でもホントにイケメンだからムカつく。



一歩下がって距離を取ると、殴るぞと言いながら殴られた。



このセンセ、コミュ力高いな…、出会って数分で大分打ち解けてしまった。



「ったぁー…体罰だ…」



教師「下らないこと言ってないで話戻すぞ」



なら殴る前に戻せよ、と思ったが口答えしたらどうなるかわからないからグッと堪える。



教師「さっきも行ったが、理事長は今緊急事態で不在だ。だから戻ってくるまでここで待ってろとの指示だ」



「…いつ帰ってくるんすか」



教師「さぁな」



「それまでアンタと一緒に居ろと」



教師「そういうことだ」



(間)



「……………かえ」



教師「帰るとか言うなよ。俺の首が飛ぶ」



「私には関係ないっす、さいなら」



教師「お前の学生生活も保障できないな」



立ち上がり、出しかけていた足を止める。コイツ…、



「…………それ、脅しって言うんすよ」



振り返ってセンセーの顔を見ると、偉そうに椅子に凭れながらニヒルに笑っていた。



教師「帰らないのか?」



「帰れないのわかっててよく言えますなぁ」



教師「諦めろ。黙って座っとけ」



「……へいへい」


コイツの脅は………説得に負けて渋々椅子に座り直した。



あー……もう…わたしゃ何もせずじっと待つことが嫌いなんだよ。



「あの白髪パンダ覚えてろよ…」



教師「あ。いい忘れてたけど、お前の担任だから」



「……は?誰がっすか」



教師「俺」



「…マジで?」



教師「マジで」



「やっぱ帰…」



黒川「名前は黒川だ。一年間よろしくな?」



立ち去ろうとした私の腕を爽やかに笑いながらギリギリ握られる。握力、握力やべぇよお兄さん。



「痛い痛い痛い痛い!!!ちょ、マジで離して?!」



黒川「なら座れ」



「座る!座るからあ!」



よし。と頷き離してくれた手をプラプラ振りながら黒川センセーを睨むと、凄くいい笑顔を返された。



「はぁ…」



教師「何事も諦めが肝心だぞ」



「アンタほんとに教師かそのセリフ」



教師「アンタ言うな、殴るぞ」



「じゃあ黒ちゃん」



教師「先生付けろ」



「痛いっ」



入学早々、個性的な先生に目をつけられてしまった私だった。



(でも…、)



気取らなくて素で接してくる黒ちゃんに、いい関係を築けそうな。そんな予感がした。



黒川「何見てんだ。…………さては惚れたな?残念だが、俺はエロい体の女しか興味ねぇから、まあお前も多少は胸あるけど」



「前言撤回」



最低なセクハラ教師だ。


(あーあ、厄介な人に捕まってしまったな)



そういえばあの男の子、ちゃんとたどり着けたかな。








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