『道標』

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第3話
【再会×2】









「くっそ、…黒ちゃんめぇ…っ、」



登校する人たちを避けながらグラウンドに向かって走る。時々、ぶつかったりするがしっかり謝ったよ。



「あんな大事なことさっさと言えっての…っ!」



職員室で黒ちゃんに捕まり何とか抜け出そうとしていた私だったが、呼び出した張本人の理事長がいない理由を告げられた。



訳は緊急事態で、と。



その内容は正しくそれは、理事長に呼び出された他に私がこんな早くから来た理由だったのだ。


それはある人からの指示。と、私の個人的な感情。



──絶対に止めて見せる。



強く決意して進んでいくと目的地が見えてきた。



「はっ…はぁ…やっと着いた…っ、何だこの人だかりは…」



土手のようになってある場所。その下にあるグラウンドを取り囲むように生徒が群がっている。それは楽しんでいるやつから心配そうに見るやつまで色々と。



──きっと、奴らが何かしたんだ。



急いでグラウンドに目を向ける。よく凝らして見てみると…、



「…!!、あいつは!」



先刻に校門前でぶつかってきたあの生意気な改造制服野郎がピッチに立っていた。



(あいつ…シードだったのか…)


最初からわかってたらあの時とっちめてやったってのに…っ!



はぁ、と情けない自分に溜息をつく。



ふと、もう一度見てみるとその刺客の前には見知った顔の男の子が激しく肩を動かし、座り込んでいた。



「へぇ…あの子…」



真言は感心したように笑みを浮かべる。




シードとは、厳しい訓練を受け鍛え上げられたある組織の先鋭達。中には逸材として特別強化を受ける奴たちもいる。



そんな奴たちと、まだ雷門サッカー部に入部してすらない新入生が手を合わせているのだ。よっぽどのサッカーセンスを持ち合わせているに違いない。



「もしかしたら…、あの子が……」



……いや、もう少し様子を見よう。



何を考えているのか、真言は階段に座り二人を……特にシードじゃない方の男の子を観察し出した。



「………ん?」



暫くして、シードのボールを奪おうとしている男の子のプレーを見て、真言は首を傾げた。



「おかしいな…」



その表情は明らかに困惑している。



(あの子…、)



ダメダメじゃん。



動きにはキレがないし、ミスばかりしている。今まで本当にサッカーしてたのか、と疑問に思うほど。



(…そういえば、)



あの子、練習はドリブルしかしてなかった。とか言ってたよな。



いや、だとしてもあれは酷い…。



「はは…、やっぱ彼ではないかな、これは…」



ひきつった笑い方。落胆した様子で立ちあがり階段を下りていく。だが、



「……おいおい、」



シードの方を見て顔色を変える。ここに来て初めて見せた真言の焦った顔。



シードが、男の子に向かって必殺技を放とうとしているのだ。



「頭いかれてんじゃねーの!」



助けに行こうと、走る態勢になるが男の子の様子を見て止まった。



あの子…俯いて表情は見えないが、何か力を感じる。



彼に向かって突き進むシュート。距離が縮まったとき彼は強い瞳で顔を上げると、シュートにヘディングをした。



それは見事に彼の足元に収まった。



その場にいるみんな。シードも、そして私も驚きを隠せなかった。



それはシュートを止めたことに対してもあるのだが…、



(今一瞬背中から出てた藍色のオーラ…あれはまさか…)



今はまだサッカーセンスはないに等しいけど…才能があるということなのか、あの子には。



「……よし、」



────しばらく見守ってみるか。


もしかしたら最終的に彼が"鍵"となるかもしれない。


「……あの子なら、いいかな」



私はさっきの会話を思い出す。サッカーは友達だ、と言っていたあの子の言葉を。



嬉しそうに笑う真言だったが、シードの行動に急変。



?「サッカーサッカー言うんじゃねええ!!うぜえんだよお!!!」



ここまで聞こえた奴の声。叫んだとともに改造制服野郎は足を上げた。



「!!、 させるか!」



彼の行動に驚くが、一瞬で切り替えると飛び降りるような形で階段をかけ降りた。



?「っっ!」



放たれたサッカーボール。男の子は避けられない、と覚悟を決め目を瞑る。



誰もが最悪の展開を想像した。



………が、それは真言によって防がれる。



疾風のような速さで男の子の前に現れた彼女は、迫ってくるシュートに蹴りを入れた。



少し競り合うとボールは真上に跳び上がった。



シード「なっ!?」



シードは目を見開く。それは彼だけじゃない、他の人達もだ。



トンッ、と落ちてきたボールを片手でキャッチした真言は、驚愕し目を見開いているシードを見て勝ち誇った笑み。



「やぁ?また会ったな、クソガキ」



あ、やべぇ。顔見たら腹立ってきた。







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