『道標』

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第11話
【やっぱ合わないね】






「……ん」


あれ、私…どうしたんだっけ。


瞼を開けると、目の前に拡がったのは一面の空模様。
雲ひとつもない綺麗な青空だなあ…今日は快晴だ。ぽかぽかして気持ちがいい。


「私なんでこんなところに寝てるんだ…」


?「おい、目が覚めたならとっとと起きろ」


「んぁ?」


ぼーっとしていると頭上から聞こえたのは、聞き覚えのある嫌味ったらしい声。
ゆっくりと起き上がって見てみると、そこにはもみ上げくんが座っていた。噂をすればなんとやら、だな。それも迷惑そうな顔している。そんな顔しなくても良くないかい。


剣城「はっ、なんだその情けねぇ声」


「…寝起きはみんなこんなもんだろー?」


皮肉を軽く返して立ち上がる。んー!っと声を上げながら伸びをして頭の中を整理。


私確か発作が起きて、保健室行こうとして力尽きて倒れたんだよな?でも頭…たんこぶ出来てない。


真言は自分の頭を軽く撫でてみるが、特に目立った傷等はなかった。


「…あのさー、もしかして私が倒れそうになってたところ助けてくれたりした?」


剣城「歩いてたらお前がこっちにぶつかってきただけだ」


クソ迷惑だ、とでっかく舌打ちをされる。
別にイラッとなんかしてないよ?私大人だからね、うん。


「…でも私がここに寝そべってたのは君がそうしてくれたからだろ?怪我せずに済んだよ、ありがとな」


剣城「別に、そのまま放置していて誰かに見られると俺がお前を襲ったように見られるからそうしただけだ、お前のためじゃねえ」


…ああいえばこういうなこのクソガキィ!!!


(っと危ない危ない、短気なところが出ちゃうとこだったよ)


イラァッとした真言だったが、我に返り怒りを抑える。
てかそのセリフ、あんだけ暴れ回った後によく言えたもんだよな!?もう今更だろ、やべぇやつ認定されちゃってるって。改造制服着てるし。もみ上げだし。


一瞬イラついたのが顔に出たのを見逃さなかった剣城は、にやりと口角を上げた。


剣城「なんだ、言いたいことでもあるのか?」


「…まあまあ、そんな棘のある喋り方しないでくれよ。さっき私たち、握手して友達になったじゃないか。仲良くしてよ、な?」


剣城「俺はお前と友達になったつもりは一切ねえよ」


くしゃっと頭を撫でようと伸ばした手を、パシッと払われてまたまた迷惑そうな顔をされる。あ、だめだこりゃ我慢出来ね。
(本日二度目)ぷっつーんと何かが切れた。


「…上等だクソガキ。穏便に済ませようとしたけど、もー限界だ!!!お前とはぜってー仲良くしないからな!」


剣城「誰も仲良くしてくれなんて頼んでねえよ、余計なお世話だ」


「だー口答えばっかしやがってええええ!!!!」


ほんっっっと可愛くねえなこいつ!!!!愛想って言葉知ってんのか!?!?


地団駄踏みそうになるのを必死に抑える真言。その様子を見てにやにやしている剣城。さらに逆上する真言。これは相性が悪すぎる。


「…君の相手していても埒が明かないから、私はこの辺で失礼するよ」


ふーっと大きく息を吐いた真言は、なんとか気持ちを落ち着かせてその場を離れようとした。いや、ほんとに、ありがとうなんて言った私が恥ずかしいよ。こいつにゃ人の心がない、悪魔だよ悪魔。


じゃあな、と手をひらひらさせて踵を返したその時、


剣城「待てよ」


パシっと手を掴まれる。おかげでそれ以上進めない訳で。


「…なにさ?もう話すことは無いよ」


剣城「お前、俺がつまらない言い合いをするために目が覚めるまで待ってたと思ってんのか?」


待ってたんかい。


「そうじゃないならなんなのさ?」


剣城「さっきも聞いたが、お前何者だ」


「…げっ」


そういえばそんなこと聞かれてたな…。聞かれたくない内容をふられ、真言は思いっきり眉をしかめる。


よし、ここは黙秘だ。


「……」


剣城「さっきまでぺらぺらお喋りしてた口はどうした?」


「…………」


剣城「俺の邪魔になる存在とはなんだ」


「…………………」


剣城「…そのまま黙ってるってんなら、俺にも考えはあるぞ」


「…なに?」


すると剣城は怪しげに笑った。


剣城「しばらくお前のことを監視する」


「監視?」


剣城「つまり粘着するってことだ」


「…は!?」


いやいやいや!?それは困るけど!?なるべく誰とも関わらずに行動したいのに、よりにもよってシードのやつが引っ付いてくるとか…、


(もうなんも出来ねーじゃん!!)


さすがにそれは困る、てか困るなんてもんじゃない。無理無理絶対無理。


「……サッカーしてる普通の女の子だよ」


剣城「普通の女がシードと渡り合えるセンス持ってるわけねえだろ」


デスヨネー詰んだ。


困ったどうしようかと目を泳がせている真言をじっと見つめていた剣城。するとしばらくしてどうしたのか、掴んでいた手を話してこう言った。


剣城「なんてな?」


「……へ?」


剣城「別に今話さなくても後々わかるだろ、お前の素性は」


粘着なんてのもしねえよ、俺にはやることがあってお前を相手してるほど暇じゃねえんだ。とまで言われる。


「…は?なに、つまりどういう、」


剣城「そういうわけだ。



───意外とからかいがいのあるやつなんだな、お前」


そう言って彼は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。そして振り向かずにどこかへと歩いていった。
は、なに?え?


「…から、かわれた?」


完全に見えなくなるまでぼーっと後ろ姿を見ていたが、やっとのことで思考が追いついた。これは完全に遊ばれた。


「〜〜〜〜〜〜っこのもみ上げ野郎があああああ!!!!!」


私の全力の怒声は、あいつには届いてないだろう。









剣城(すかした態度しか取らねえと思ってたが、案外短気でガキみたいなやつだったな)


さっきは好き放題されたが、こっちのペースになると大したこと無かったな。
しばらく遊べそうだ。


くくっと喉の奥で笑う。その様子は、新しいオモチャを見つけてわくわくしている小さい子供のようだった。

やり返しが出来たからか、遊び道具を見つけたからか、気分はかなりよかった。


去った剣城がこんなことを考えているだなんて、真言は知るわけもなかった…。


(ん?なんか寒気する)







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