『道標』

□15
1ページ/1ページ


第15話
【早朝に】





翌朝。
予定より早く目が覚めた私は、焼いたトーストをかじりながらのんびりと学校に向かっていた。


小鳥のさえずりを聞きながら、暖かな陽の光を浴びていてると朝からとても幸せな気分になった。清々しい朝は最高だな!


いい気持ちでしばらく歩いていると河川敷に到着した。するとそこには、天馬と信助が仲良くサッカーをしている姿があった。


こんな朝早くから…さては入部テストがあるから張り切ってるんだな。


微笑ましい光景に真言は優しい表情になると、階段をおりて2人の元までゆっくりと歩いていく。


松風「あ!真言さん!」


「天馬、信助。おはよ」


やっ、と手を挙げてそういうと、2人は声を揃えておはようございます!と挨拶を返してくれた。うんうん、朝から元気なのはとてもよろしい。


「こんな朝早くから練習か?」


松風「はい!俺もう待ちきれなくって!」


「そんなに急がなくても、サッカーは逃げたりしないよ」


目をらんらんとさせている天馬に、真言はクスクスと笑う。ほんとサッカーのことばっかり考えてるんだな。


こんな純粋な表情を、気持ちをぶつけられると力になってあげたくなる。


「よかったら、練習相手になろうか?」


松風・西園「「いいんですか!?」」


「私は構わないよ」


ほんと息ぴったりだなあ…この2人。
昨日からタイミング合わせてるのかというほどのハモリ具合に面白くなる。


やったー!っと喜んでいる2人に、真言も嬉しそうに頬を緩める。青春って感じだ、こういうのいいなあ。


「じゃ、早速始めようか。

2人が私からボールを取られないようにするか、私からボールを取る練習にするか。どっちがいい?」


西園「2対1でやるんですか…?」


さすがにそれは分が悪いのでは…と言いたげな表情の西園に対して、真言はにやりと口端を上げる。


「私を舐めないでほしいね。

さ、どこからでもかかっておいでよ」


余裕綽々といった様子でそういうと、真言は手に持っていたサッカーボールを離し、2人の前でリフティングを始めた。これはかかってこいということだろうか。


松風「…よーし!信助!行くぞお!」


西園「うん!」


察した2人は顔を見合わせると、全力で真言にぶつかりに行った。













松風「授業が始まっちゃうう!!!」


西園「夢中になりすぎたああ!!」


「2人とも急げ急げ!」


聞こえる呼び鈴に慌てふためきながら、3人は全速力で校舎へと走る。


2人があまりにも熱心だったから、私もつい力が入ってしまった…気づけば時間はギリギリになっていた。


やっとのこと校舎の出入口に到着すると、2人は肩で息をしながら私の方へ向くと勢いよく頭を下げてきた。なになに、びっくりしたなあ…。


西園「練習に付き合ってくれてありがとうございました!2対1なのに本当に1度も勝てなかったです…」


松風「次は1回でもボール取れるように頑張ります!またお願いしてもいいですか…?」


「うん、私なんかでよければ喜んで」


そう返事をすると、2人はまた声を揃えてやったあ!と嬉しそうに飛び跳ねた。ほんとに可愛い後輩たちだなあ…こんなの優しくしてあげたくなるって。


「ほらほら、授業始まるから。早く行きな」


松風「あ、はい!それじゃあまた!」


いつまでもはしゃいでそうな雰囲気だったから、促すと2人は手を振りながら教室へと走っていった。あんなに喜んでくれるなら、朝早くから出てきた甲斐があったなあ。出会ったのはたまたまだけど。


真言は2人の後ろ姿が見えなくなるまで、柔らかな表情で見送った。


「…さて、私はどうするかなあ」


実は私は、留学先である程度勉強は進めていたから、しばらくここで学ぶようなことないんだよね。授業には出ても出なくても、テストさえ受ければ成績は問題ないようにあの人が手配してくれた。理事長には昨日その書類を提出してあるし、あれやこれや質問されたけど無視した。まあ私に対して干渉はできないはず。


「しばらく時間潰せそうな場所探すか…」


私は校内を探索するために、天馬たちとは違う方向へと足を進めた。楽しい時間を過ごさせてもらったよ、ありがと天馬、信助。






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ