『道標』
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第18話
【合格者は】
入部テストが終わり、一年生たちは久遠の前に集められる。
松風と西園は荒い息使いのまま話は進められた。
久遠「結果を発表する。合格者は……、」
神童(いない。全員不合格に決まっている)
もう結果はわかっているという表情で、神童は目を瞑って久遠の言葉を待つ。
だが、神童の望む答えは来なかった。
久遠「松風天馬」
松風「えぇ…っ?」
久遠「西園信介」
西園「へ……っ?」
こんなに神童に力の差を見せつけられたのに、まさか自分たちの名前を呼ばれるだなんて思ってなかった二人は、間抜けな声を出して久遠を見上げる。
一方雷門イレブン…特に神童は、合格者がいると思っていなかったため、驚いた様子で二人を見直した。
久遠「以上、二名だ」
古手川「納得いきません!!どうしてこいつらだけ………!!」
かなり不満げに反抗する古手川たちだが、久遠の有無を言わせない目と無言の圧力に三人は怖じけずく。
古手川「………ふんっ、楽勝だと思ったのによ」
押井「こっちから願い下げだぜ」
金成「雷門サッカー部もお仕舞いだよ」
最後の抵抗に文句を言いながら、三人はグラウンドの外へと歩きだした。
さっきの久遠の目、あれは三人の企みがわかっていた目だ。最初からバレていた、ということだ。だが勿論、松風たちの合格はそれが理由だからというわけじゃないが。
古手川「なんであんな下手くそが合格なんだよッッ」
気に入らないように、ぶつくさと悪態つきながら階段を上る3人。その頂上に座って試合の様子を見ていた剣城が声をかけた。
剣城「つまりお前らは、その“ヘタクソ”以下ってことだ」
どうなんだ?と言うように剣城は見下しながら口角を上げる。それはそれはイヤらしい笑い方で。
実際その通りなわけで。言い返す言葉が出ないのか、3人は言葉を詰まらせるとそそくさとその場を離れていった。
「合格者は天馬と信助だけか」
ま、他の3人は有り得なかった。
あの程度の実力と、気持ちじゃ…な。
それにしてもやっぱり久遠さんも私と同じ考えか。天馬には、特別な何かを感じるんだ。合格にしたのもきっと、これからのことを見越して…。
頬をつねりあいながら喜びあっている2人の姿を、真言は自分の事のように嬉しく思った。
「おめでとう、天馬。信助」
さて、これからどうなるかな。
2人に対して優しく微笑むと、真言はグラウンドを後にした。
剣城「……」
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神童「監督!!なぜあの二人が合格なんですか!?」
結果を伝えたと同時に、早々と行ってしまった久遠を追いかけてきた神童。合格者はいないと思い、その中でもあの二人はないだろうと思っていた矢先、ああ発表されたのだから。
神童「他の三人同様、不合格のはずです!!」
苛立ちから声を荒らげて、納得がいかない彼に、久遠は静かに振り返った。
久遠「お前は何も感じなかったのか」
神童「何をです!!!」
松風天馬、西園信介………、
久遠「あの二人でなければならない。それが全てだ」
神童「答えになっていません!!!」
久遠「今にわかる、神童」
それだけを伝えると、久遠は神童を置いて去った。感情をぶつける先がなくなった神童は、強く拳を握りしめる。
神童「わかっていないのは監督です…!俺にも…誰にも何もできない…!」
正直、久遠監督の言いたいことはわからないこともなかった。だから俺は、こんなにも心を揺さぶられているんだから。
だとしても、誰が入ってこようがもうどうしようもないんだ。
雷門サッカー部は、おしまいだ。
神童の声は、誰にも届かない。
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