夢物語
□赤いジュースはいかが?
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「お?俺のコト知ってんのけ?俺も有名になったなぁ」
ケラケラと笑う男…ジャン。
それもそのはず。
数日前からこのデイバンを騒がす“ある事”が起こっている。
大量の血を抜かれている女性の死体が見つかるという連続殺人事件。
どの死体にも首筋には二つの小さな穴があり、血痕はどこにも無くまるで注射器で血を取られているように綺麗なままなのだ。
「お嬢さんの名前、教えくれよ?」
『ぁ…ルチア…』
自然と声が震えてしまう。
『ど、して…』
私なの?
続くはずの言葉は言葉にならずに空気となり、ヒュウヒュウと口から抜け出る。
身体もカタカタと震え、これからどんなことをされるのか…嫌なことしか浮かばない。
『恐がんなよ、ルチアちゃん。そこまでビビられると傷ついちゃう…こっちにおいで』
不安ながらも近づくと、明るい月に照らされた綺麗な顔がより輝いて見える。
これで見惚れない人はいないだろう。
「んまぁ…隣、座んなさいな」
笑顔でポンポンとソファを叩きながらそう言われ、素直に隣に座る。
その刹那―
「いっただき〜!」
『ひゃう…っ!?』
首筋にレロリと舌が這う。
頬を赤らめながら何事かと睨むが、当の本人は何故か驚いたように目を見開いている。
「…ま……う…ぇ…」
『な、何なのよ!?』
「お前、美味ぇんだな!?こんなに美味いの、何年ぶりだよ!?」
えぇと…と呟きながら指を折ながら数えている。
『う、美味い…?』
心底分からない、という表情で疑問符を飛ばし続けるルチアをよそにジャンは…
「殺すにしては勿体無さすぎるし…いっそ連れて帰るか?…でもそれだとアイツ等が五月蠅いだろうしなぁ…」
…。
物騒なコト呟いてましたぁっ!?
ど、どどどどうしよう!?
こ…殺されちゃうのかな?
『わ、わた…し…こ、ここ殺されちゃうの?』
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