夢物語
□Un caduto angelo
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日が沈んで間もないデイバンのとある街の一角。男は自分のシマであるその街を見回っていた。
1日の仕事ももう終わろうとしている。
その時、視界の端に地面に小さく盛り上がる影を見つけ、警戒を忘れずにそっと近づく。
「なんだ?………っ!?」
その影の正体を見た刹那、男は目を疑った。
顔に光を当てられたように眩しく感じられるほどに白い大きな翼、透けるように白い肌…
倒れているのか、それとも寝ているのか分からない綺麗な髪を持つ女。
そのままにしておくのは男としてのプライドが許さず、「仕方がない」といったように男が動き、女の顔を覗く。
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「…ぃ……ぉ…ぃおいっ!大丈夫か?」
声が聞こえる…。誰よ?この私にそんな口を利くなんて…生意気にもほどがあるわ!その顔を拝んでやろうじゃないの…
バッと顔を上げると近くに顔が見え、その近さに息を呑む。
どうやら覗き込まれているらしい。
じっ…と見ていると男がニマリと顔を歪め、
「何だ?俺の美貌に見惚れたか?」
『…なっ、なっ…!?』
いきなりかけられたその言葉に驚きと[俺様]な態度に少しの怒りを覚え、口を開けていると男は微笑し紳士的な、しかし妖しい笑みを浮かべ訊ねてきた。
「で、高貴なangelaはこの人間界に何の用があって来た?」
『アン、ジェラ…(って天使って意味よね!?あっ!!私、翼を隠せていない!!)』
純白に輝く大きな翼をその小さな背に隠す。
ヤバい…見られてしまった…なんて言われるのだろうか…
下界の人間は心が狭いと聞かされている。それ故に悪いことだけが頭に浮かぶ。
それを怯えと捉えたのか男は優しく微笑み、
「俺はルキーノだ。そのままじゃ色々とヤバいだろ?幸い今ここは人通りが少ないが時間がたつと人が増えてくる。とりあえず俺の家に来い。」
突然の誘いに目を見開き、ポカン…と口を開く。
さぞ滑稽であったであろうがそれを気にする暇もない。
有り難い。
素直に喜びを顔に浮かべ、ふとルキーノの肩越しに表通りを見てみる人がだんだんと増えているのが目に映る。