シドライ

□そばに…
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一目惚れの続編

ライトさん、騎兵隊設定です。




士官学校卒業後、騎兵隊に入った。
司令官補佐になって今日で二週間精神的にも肉体的にもボロボロだ…

初日から、秒単位のトレーニング、事務作業…
自室に帰れば、なんとかシャワーを浴び、バスローブのままベッドに倒れこむ。疲れをとろうと、バスタブに湯をはって入れば、寝てしまい、溺れそうになった事が何回かあった。


周りは、異例の出世に上官に身体を売ったと噂がたった。
ハードなトレーニングを見て今ではその噂も少なくなった。

ここ一週間まともに食事がとれていない…

自室でパンを見て深い息をはいた。

一口パンをちぎって食べ部屋を出る。

司令室へと向う。
窓のない廊下を朝と知らせるものもなく、夜も朝も変わらない照明の光が足元を照らす。

いつもの道…
身体が重い…

やっとの思いで、司令室についた。
正面には壁一面の強化ガラス…
その手前には司令官の机が強化ガラスを背に配置されていた。

左右手前に二つのデスク…真ん中を向けこの字型に設置されたデスクを見て左側の自分のデスクに腰を落ち着けた。

部屋には誰も居ない。
自分の机には山の書類…
いつもと同じ…
山の書類に手をつけ始めた。

たまに、目がボヤける…
それでも作業を進めた。

部屋に来て1時間がたっていた。
何か飲み物を…と立ち上がると、ふらつく足に力を入れた。

立ちくらみ…
こめかみに手をやりキュッと押してみた。
ダメだ…

立っているのがやっとの状態…
胸が苦しい…

医務室に…
と、出口に向かって歩きだした。
普通に歩けば何分とかからない距離…
苦しさに、涙が流れた。

やっとの思いで扉のタッチパネルまで辿りついた。
タッチパネルを押す前に
スーっと扉が開かれた。
部屋に入ってきた2人の姿を見て安心したのか、ガクンっと身体が云う事をきかなくなり、膝を床につけた。

「ファロン?」
肩で息をしている後輩の姿におかしいと思ったのか、早足で近づいて額に手を当てる。

「アツイ…。お前、ちょっ…横に…」

何やら、バタバタ騒ぎだし、パニックになっている。


それを、聞いて、黒髪の男も、ライトニングの額に手を伸ばす。
「… 准…将…すいません…私…」

レインズがライトニングの頬に手をやると彼女はフッと、笑みを見せると意識を手放した。

彼女の頭を自分の胸にだき、


「リグディ、軍医をよべ。」
「はい。」

ライトニングを司令室の仮眠用ベッドに寝かした。

「無理をさせ過ぎた…か…」

「閣下、5分程で軍医来ますから。」

背後から声がかかり、
声の方へ身体をむけた。

「ああ、ありがとう。」

その男も心配そうに、ベッドを挟んだ反対側に立ち、ライトニングの、頭を撫でてやった。

意識のない彼女をただ黙って2人見守る事しかできなかった。


軍医が時間通りに、到着すると慌ただしく検査が行なわれた。

2人は自分の席に着き、そわそわと、診察の終わりを待った。

軍医が検査が、終わったのかレインズの、デスクの、前にやってきた。

「検査の結果、過度の過労、栄養失調と思われます。」

2人は顔を見合わせた。
過労は、わかる。
栄養失調?
2人の顔に、軍医は説明を、続けた。
「入隊時の体重ですが、身長から見ると平均より軽かったのですが…、二週間でさらに7キロ落ちています。今、点滴をして薬を、投与しました。
何かあったら、またご連絡を…」

レインズは手を、あげて返事をした。
軍医は、司令室から出て行ってしまった。

「栄養失調って…」
「無理をさせ過ぎたのはわかっていたのだがな…」
「それは、仕方ありませんよ。変な噂も、ありましたし…」
「噂など…どうでも良かったのだがな…私は…彼女の耳にも入ってしまっただろうか?」
「どうでしょう…」

……上官に身体を売って地位を得た女……

ライトニングの事だ…
媚びてもこないこの女を、周りはそういう目で見た。
だから、秒単位のハードなトレーニングを、させた。
彼女に厳しくし、皆に見せつけた。
その強さを…
決して、身体を売る様な女ではないと……
噂は2日で聞かなくなった…
皆が、認めたのだ彼女の強さを…
司令官補佐としても、有能で、レインズが居なければ、指示を出せるようにもなっていた。

「本当に腹立たしい噂だな…」
「まったくですね…うちの可愛いお姫様なのに…」

リグディは、ライトニングの涙の、あとを優しくなぞる。

「お前は、さっきからベタベタと…」
「あれ?ヤキモチですか?閣下らしくもない…」
 
レインズはふいっとリグディから目を伏せた。

「本当、らしくない。自分でもそう思う…でも、本当に本気で惚れてしまったらしい。嫌われるのが怖いな…」
らしくない、閣下に、
リグディはため息をひとつして、
「俺は手は出しませんのでご安心を…本当に、妹のように大事なんです…こいつは…」

「んっ…」

ライトニングの目がうっすらと開いた。
呼吸もいつもどうり…
2人は、安心しきった顔でライトニングの顔を覗き込む。

「私……」

2人の顔を見ながら、どうにか記憶を繋ぎ出す…
思い出したのか、目を見開くと、ガバッと起き上がる。
視界がグラっと波打つように見えたと思ったら暖かい何かに抱きしめられていた。
「…まだ起きてはだめだ…」
准将?
ライトニングの胸が高鳴る。
「すいません…」

ゆっくりと、枕へと、頭をおいてくれた。
「私、ご迷惑を…申し訳ありませんでした…」

「迷惑とは、思っていない…
心配した…」

真剣な眼差しに直視できず、目をそらせる…

「すいません…」
リグディが時計を、見て声をかける。
「ランチ行きましょうよ。あ…今日はここで、食べましょう。ファロンもまだ起きれないでしょ?」

「私は…」
「食べない?君が倒れたのは、過労もそうだが…栄養失調だそうだよ…いつからちゃんと食べてないの?」

そんな至近距離で聞かれても困る。ここ最近確かにちゃんと食べていない。
それは自分でも自覚していた。
疲れもあった。でも、それとは別に理由がある…
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