シドライ

□守りたいもの
1ページ/1ページ

「くっ…」
顔を顰めるライトニング…

彼女の額からは赤い物が流れ、手足は縛られていた…

暗やみ…荒れた室内…
廃墟の様なその場所…
ここが何処かもわからない…

ただ確かなのは、彼女の前には男が一人立って居るという事実…





「まだわからないのかッ?」

怒鳴るように言い放たれたその言葉に、兵士はビクッとするのがわかる。

普段、冷静沈着なレインズが、怒鳴るなどした事がない。
本当に、あいつが絡むとたちが悪い…


今日、ライトニングは、休暇をとっていた。
久しぶりにボーダムへ行くと告げ小型飛空挺で出掛けた…
しかしその飛空挺共々行方不明になってしまった。

ライトニングと連絡がとれなくて10時間…
何かあったとしか考えられない…

時計を見つめため息をついた。

「すまない…怒鳴ってしまって…」
冷静にならなければ…

レインズの仕事用コミュニケーターがけたたましく鳴り響いた。

着信の表示…ファロンの文字に目を丸くする。

今日は彼女は休みだ…こっちに電話などする訳がない…

リグディに着信を一旦見せる。
彼の表情が険しくなるのがわかった。

少し呼吸を落ち着かせ、出た。
コミュニケーターから映像が映し出された…

壁にもたれかかるように座り込んだピンクブロンド…手足は縛られ、白い首には、赤く腫れあがっているのがわかる…
額からは赤いモノが流れ、意識はあるようだ…
その傍らに小型飛空挺を操縦していた奴が血まみれで倒れていた。

「シド.レインズか?」
低い声…男の声だ…
「そうだ…」
男の姿は、映し出されない声だけ…

「お前の隊の奴なら誰でもよかったのだが…俺はついてるらしい…
騎兵隊に…まさかこんな美人がいるなんてな…」

顎をグイっと持ち上げられこちらを見るライトニング…

画面いっぱいに彼女の顔が映し出された。
胸が張り裂けそうになる…
すぐに助けてやりたいのに、いる場所すらわからず、額から流れる赤いモノが痛痛しい…手を差し伸べられないもどかしさ、優しく声すらかけられない。

「で…こんな事をする意味は?要求を聞こう…その前に、うちの隊の者と話しがしたい…」
「かまわない…」

「ファロン上等兵…大丈夫か?」
聞かれている…言葉を選んでしゃべる。
「……なんとか…すいません…」

掠れた声…

「レインズ准将閣下、そちらにアダモ曹長はいらっしゃいますか?」
アダモ?奴はボーダム治安連隊だ…居るわけがない…
でも、何かあるはずだ

「いや…今は出ている…」
「そうですか…彼に提出してない書類がありまして…私の机の1番下の引き出しに…それを…彼に…」
「わかった。」

リグディに目で合図をした。
コミュニケーターから視覚にいた彼は司令室へと出て行った。

「もういいだろ?」
「後一つ…私の彼に伝えてください閣下。愛しています。無理をしないで…と…」
「…あぁ、ちゃんと伝える…」

ライトニングはコミュニケーターを見て笑って見せた。


「さて、そろそろ、本題だ…
要求は簡単だ。騎兵隊のトップの命…
ついでに、この美人も貰うかな。」
顎を掴まれる、手は縛られ動かせない…
映像に男の顔が映り込む。
その顔に見覚えはない…

リグディは資料を片手に部屋に戻ってきた。
ライトニングの顔と男の顔が画面いっぱいに映し出されている。

肩を掴まれ、身動きが出来ないライトニングの唇を男は奪った。

嫌ッ…
もがいても、相手の唇は離れない
唇を噛んでやろうと思ったら相手の舌が入り込んできた…

「んんッ…」

唇がやっと離れた…
ライトニングはペッと、唾を吐き出し唇を肩で拭った。

レインズの表情が変わった…
先ほどまで、冷静だった彼が怒りの表情に、変わったのだ。


「そいつにそれ以上触れるな…」
そう言ったのはレインズではなく、リグディだった。

「とりあえず、閣下を連れていけば良いんだろう?場所を言え。」

男の口角が上がった

「後ほど…また連絡を入れる」

ピッと通信が切れた…

「逆探知しろ…」「はっ。」
リグディの顔も険しいままだ
「アダモ曹長をよんでくれ…」

何かあるはずだ…彼女がアダモの名前を口にした…何かが…


☆☆☆

「バ…ルト…」

苦しそうに潤んだ目で男を見つめるライトニング…
「悪いな、ライト…まだ離してやれないんだ…」
彼のゴールドの髪が頬に触れる。
優しく抱きしめられ、首に冷たいモノを当てられ、気を失った。
「ごめん…ライト…」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ