シドライ

□守りたいものV
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「アダモ曹長、こいつがどうかしたのか?」
男の写真を見て顔色が変わったアダモを見てレインズが声をかけた。

チラッと見て口をへの字に曲げたアダモ…

「頼む…知っている事があるなら教えてくれ。この通りだ…」

深々と頭を下げるレインズ…
リグディもアダモは目を見開いた。

恥ずべき事ではない
地位や名誉など関係ない
ただ、彼女をエクレールを助けたい…

「頭を上げてくださいレインズ准将。すいません…ファロンにこの事は口止めされていたんで…」


「ファロンに?」

リグディはアダモの前に歩み寄った。

「二週間ほど前に、ファロンが訪ねてきたんです。」

☆☆☆


「おーファロン、お前が訪ねてくるなんて珍しいな。」

彼女の顔はいつに無く真剣な面持ちで…すぐに、二人で会議室に入った。

「曹長、バルトの事を覚えていますか?バルト.エイベル…」

「ああっ。金髪の…
あの事件以来みないが…」

少しほっとした様な様子を見せたライトニング…

「あの事件…私なりに調べていたのですが…
これが…見つかったんです。」

机の上に乗せられたガーゼの包み…

ライトニングはアダモに中身を見せた。

「銃弾か?」
「被害者の体内にあった銃弾です。これ…特殊なもので…
あの場所に1人しかこれを使える者がいなかったとわかったんです。」

「ちょっと待て。
何故あの事件にこだわる?
確かにあいつとはペアだったが、
たった一年しか関係がなかったはずだ。
それに、もう二年もたった事件の事など…」

悲しそうな顔でアダモを見たライトニングはすっと包みを懐に収め、話し始めた。

「確かに…一年…だけど、私には大切な一年だった。
死んでしまったバルトの妹は、私を本当の姉の様に慕ってくれた。
確かに、過ごした時間は短い。
それでも…大切な物に時間は関係ないと私は思います。」

ライトニングの見た事のない泣きそうな表情にアダモは慌てた様に

「わかった。悪かった。話しを続けてくれ。」

「この男…最近不審な行動が目につく。調べたら、あの日…あの場所でこの銃弾を使えたのは、彼しかいない事がわかりました。」

「なんだとっ?しかし、銃弾だけで…」

「アダモ曹長、すみません、騎兵隊の私のデスクに赤いファイルがあります。そこに全て証拠品や記事がまとめてある。私に何かあったら、その未完成のファイルを提出してください。」

アダモは頭を抱えた。

「お前に何かあるとは…どういう意味だっ‼」
怒鳴り腕を掴んだ。

「何を…何をつかんだんだ?ファロン…悪い…つい、怒鳴ってしまった。」

「多分…彼らの目的は…シド.レインズ准将です…
でも、直接狙う事はない…多分近い私が狙われる確立が高いでしょう。リグディ大尉は強いですから…女の私の方が…」

「しかし、ちょっと待て、提出ならすぐにしてしまえば、お前が狙われる危険もなかろう…」

「いえ、これは私の単なる推測です。何も証明できる物がないんです。銃弾もこれだけでは…」

「レインズ准将が狙われるというのは…」

「バルトは、勘違いをしています。彼はレインズ准将が遺族に謝罪しない。軍の行動は適切だったと…雑誌や新聞に載っているのが全てだと…

でも違うんです。閣下は、ちゃんと遺族に謝罪をしていた。
音声テープが残っていたんです。
全ては誤解なんです…寂しすぎませんか?そんなの…」


さみしく笑った彼女の目はすでに何かを覚悟した目に見えた。

「アダモ曹長、この事は誰にも言わないでください。
間違ってたら…恥ずかしいですから…」

そう言って笑った彼女…

☆☆☆

レインズは、顔を手で覆った。

エクレール…君は…俺の為に…


「ファロンは、予期していた…」
リグディもまた、頭を抱えた。

部屋の扉が開いた。
兵士が1人部屋に入り敬礼する。


「時間が掛かり申し訳ありません。
逆探知、成功しました。
場所は、ボーダム。」


三人は顔を見合わせ、誰が声をかけるでもなく、小型飛空挺に乗り込んだ。

ライトニングの軍刀と共に…


***


「あーあ、せっかく気持ちよく寝てたのに…」

わざとらしく、伸びをする男…

「バルト…そいつを殺せ。」

目つきがかわる…
「ロベルト、何故だ?何故ライトを、殺すんだ?」

バルトは、ライトニングを抱いたまま、ロベルトを睨んだ。

「私が、シド・レインズの女だからだ。バルト…」

すっと立ち上がるライトニング…

ドーーーーンッ
と、部屋の閉ざされていた扉が蹴り破られた。

砂埃の中、尾っぽのようなブラウンの髪がなびいて見えた。

「ったく。埃っぽいたらありゃしない…よお、ファロン姫迎えにきたぜっ。」

「大尉…」
「無事で何より…まったく、うちの姫様は、無茶し過ぎだ。」

「これの何処が姫だ…まったく…」

自分の身なりを指輪ライトニングは少し毒づいた。

その後ろから、長身の白マントの男とガタイのいい中年おやじが続いた。

「シド・レインズ…」

バルトは、本当にレインズが来るとは思ってもいなかったんだろう。驚いたように、彼の名を口にしていた。


ライトニングはレインズに笑顔を見せた。

普段滅多に笑わない彼女…
額にべったり着いた赤は痛々しいのに…
自分は大丈夫といわん限りに笑った彼女に、少し目を細めた。

「お前は、ライトニングの男か?」

ストレートに聞くバルトにリグディが背を向けて笑っている…

大尉…笑っているのバレバレですから…

「男か?と言われれば…そうだ…」

何でこの男は、認めるんだ?
おい、アダモ曹長…ビックリした顔で俺をみるなよ…
あっ!知らなかったのか…

「何で言っちゃうんですか?」
「何でって…聞かれたから…」
「ファロンが殺されちゃうでしょうが…」
「あっ!そっか…」

バカはほっとこう…
ライトニングはリグディの持つ軍刀に目をやった。

「レインズ准将が直々に迎えに来るなど…よっぽど目にかけている様で…」
「大尉!」
ロベルトの剣が見えた…
リグディは、口角を上げて軍刀をライトニング目掛けて投げ上げた。
ライトニングは手足を縛るロープを解き軍刀で振り下ろされたロベルトの剣を受け止めた…
辺りに金属音が鳴り響く…

渾身の力を込めてきた相手の剣に軍刀が押し負け、地面に落ちた。
「くっ!」

バルトを庇うように膝をつくライトニング…
ロベルトが彼女の額に銃口を当てた。
「ライト‼」
バルトが叫ぶ。
アダモが心配で近寄って来るのが見えた。

「曹長、年なんですからジッとしていてください。」
銃口を突きつけられているのにも関わらず、余裕で言い放つライトニング…
「状況がわかっているのか?ファロン」
「もちろんわかっている…
殺すのだろう。二年前あの子を殺した拳銃で…私を」
驚きに満ちた表情でライトニングを見るロベルト…
「でも、その拳銃は使えない…」
拳銃から抜き取った弾丸の束をチラッとみせた。

ライトニングは指をパチンッとならしグラビティギアを発動させた。
拳銃を胸元へ引き寄せ男を投げ飛ばした。

ドスーーンッと、男が床に叩きつけられた。リグディ達が入ってきたドアの向こう側に飛ばされ倒れた姿が見えた…

息を肩でしているライトニングに駆け寄る…
「ったく、無茶しよる…ワシを年寄り扱いしよってからに…」
相変わらずジジくさいアダモ…
「もう、年です。自覚していただかないと、周りが困ります。」

ドボドボ〜っとライトニングに液体が頭からぶっかけられた。

「曹長っ‼」
イラッとしたアダモがポーションをぶっかけたのだった…

「おいおい…大丈夫かぁ?ライト…」
心配そうに覗き込むリグディ…その横にレインズの姿があった。

「すみませんでした…話していればこんな事には…」

突然ぎゅっと抱きしめられた。
…シド…
「心配した。俺は…エクレール、お前がいないと…ダメみたいだ…」

この温もりに包まれて居たい。
でも、まだ…

ライトニングはレインズの胸元をグイッと離した。

「シド、すまない…まだ…」
終わっていない…
リグディから、赤いファイルを受け取りバルトに渡した。
拳銃から抜き取った弾丸も一緒に…

「読め…後はお前が決めろ。」

ファイルを見詰め、ライトニング

「どうして…どうしてだ?一年…たった一年しかペアだっただけの男にどうして…」

「お前がどう思って居たのか知らないが、私は楽しかった。
お前の妹…も、姉の様に慕ってくれて…」

「思い出した。エクレール.エイベル…君の妹さんの名前…」

「何故妹の名を…」

「忘れられない…彼女は、騎兵隊が殺したも同じだ。現場に居たのに助けられなかった…すまない…」

「バルト…」
「アダモ曹長…」
「レインズ准将は、会見で遺族に対し土下座をして謝った…しかし、聖府は、それを許さなかった。聖府の面目の為に、その事実をねじ伏せたんだ…」

膝をつき床をたたく…

「俺は…」
床に叩きつけた、バルトの手をそっと握りしめた。

「お前が悪い訳じゃない…
私は、真実を伝えたかった。」

扉の方からカツンと音がした…

「青春ごっこは…終わったか?」

ロベルトが剣を構えこちらを見据えていた…

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