拍手・短編

□男の子のホワイトデー〜加地編
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「そういえばさぁ」
駅前通りを並んで歩いていた時。
ふと思った事があり、加地は月森に尋ねた。
「今までだってこういう事考えた事なかったの?」
しかし、その答えはかなりシンプルだった。
「ないな。どうしてそんな事を聞くんだ?」
「いや、月森ってモテそうだから」
「…?」
加地の言葉に月森が眉を寄せた。
一体誰の事を言っているのか?
そんな感じなのだ。
「…まさか、気付いていなかったの?」
「何をだ?確かにこの時期、下駄箱や机の中にチョコレートを入れてあったりしたが、あまりにも不審すぎて捨てていたし」
「…」
「いきなり呼び出されて貰ったりしたが、貰ういわれもないし、その場で返していたが?」
「…そ、そう」
加地はア然としながらそれを聞いてしまった。
…朴念仁、ここに極まれり。
「あのさ、もしかして…日野さんが初恋、とかって感じ?」
まさか、とは思いながら加地が尋ねると。
面白い程真っ赤になる月森蓮という、世にも珍しいものが見られてしまった結果となった。
「え゛?嘘、ホントに?」
「そっ、それが何かっ?」
さっきから驚きの連続で、言葉も出ない。
「いや、らしいといえばらしいけれど…」
「…天羽さんにはぜっったいに言うなよ?」
月森が焦ったような表情で加地に詰め寄った。
「い、言わないけどさぁ。…月森って本当に面白いね」
「…」
初めて会った頃は、よくいる音楽馬鹿かと思ったこの友人の、意外と言えば意外すぎるその言動に、流石の加地も、それしか言う事ができなかったのだった。
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