長編・シリーズ

□reunion
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夕食は何となくグループごと、のような雰囲気だったが、ヴァイオリンチームは第一第二合同で、大人数でとっていた。
蓮も何となくそのグループの中に入って、食事を取ることになり。
さりげなく香穂子の隣に座った。
「にしても…月森とこうして一緒になんて、やれると思っていなかったよな」
香穂子の前に座っていた、内田がしみじみと蓮を見ながら言った。
「そうだな」
「日野さんとはあの市民オケのメンバー参加から何度か一緒だったけれど…」
「あははっ、そうだねぇ」
香穂子は楽しそうに答えた。
内田は高校時代、蓮とクラスメイトで、何となく親しかった。
そのせいなのか、あの市民オケの参加者を探していた時、早い段階から参加を希望してくれたのだ。
それからオケの魅力に取り付かれ、こうして学内オケにも参加しているのだ、と以前に聞いた事があった。
「いやいや、本当に嬉しいよ。って俺に言われても月森は嬉しくないか」
「いや、俺も嬉しいよ。やはり自分で決めたとはいえ、高校生活を途中でリタイアしたようなものだから、当時の知り合いとかとこうした時間を過ごせるのは、有意義だし…」
「そうだよなぁ」
内田は楽しそうに頷いた。
「土浦だの冬海さんだの火原先輩だの、当時のメインメンバーもかなり揃っているし、絶対成功間違いなしって気がするよ」
「…君のそのかなり楽観的な所も変わっていないな」
蓮の言葉に、その周りにいた人間は楽しそうに笑った。

そんな様子を、早水は遠くで眺めていた。
隣に座っていた同級生の女子が、やはりうらやましそうにそれを眺めながら呟いた。
「いいなぁ、高校からのエスカレーター組って」
「そう?」
「うん、だって日野先輩も月森さんもここの高校出身でしょ?あそこで盛り上がっているのはみんなそうだし…」
「そんなの関係ないじゃない?話に入りたければ、積極的に乗り込めばいいんだし」
早水はああいう賑わいが苦手なので、ここでこうしているのだが、彼女はそういう事が好きそうなのだがら、割り込んでいけばいい。
単純にそう思っていたが、彼女は苦笑しながら首を横に振った。
「なんだか思い出話に花を咲かせているみたいだから、入りづらくって…」
「…確かにそれは入りにくいわね」
「うん、しかも…高校時代の事件の話をしているみたいだし…」
「事件?」
「私もよく知らないんだけどね、ここの高校、何年か前にピンチになったとか…で、その時大変だったねぇみたいな話してるみたい」
「ふうん」
早水は興味なさそうに頷き、再び蓮達を眺めたのだった。
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