拍手・短編

□スタア誕生
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「蓮くん、お昼食べよう?」
香穂子がエントランスにいた蓮に声をかけた。
「あ、ああ」
だが、その声は愛しの(…)彼女から声をかけられたにしては、沈んでいた。
「どうかしたの?朝から調子よくないよね?」
心配そうに声をかけると、蓮は苦笑した。
「大丈夫だ。…君に心配をかけてしまって、すまない」
「え?そんな、いいよー。でも、本当に大丈夫なの?」
「ああ…、ちょっと夢見が悪かっただけだから…」
蓮はそう言って、小さくため息をついた。
「夢見…?」
「ああ。それがどんな夢だったかについては忘れてしまったのだが、嫌な気分になったのだけは覚えていて…」
蓮は再びため息をついた。
その様子から、かなり不快な夢だった事が察せられ、香穂子はちょっとだけ同情した。
「まあ、気分直しにお昼に行きましょう?」
香穂子に背中を押されるように、二人はカフェテリアに向かったのだった。


二人が楽しくご飯を食べていると。
「香穂先輩?」
声をかけてくる人がいた。
可愛い声の持ち主は、振り返らなくても分かる。
「ちわっ、冬海ちゃん、…と土浦くん」
「…何だよ、その取って付けたような言い回しは」
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