拍手・短編

□トリプルデート大作戦
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中編〜ドキドキデート当日編〜

その日は見事な晴れだった。
加地はその天気を見ながら、自分の日頃の行いの『よさ』を実感していた。
毎日良い事を行っていれば良いことがあるね♪
…人目がなかったらスキップまでしてそうな脳天気な加地が、待ち合わせ場所に向かっていると。
「…何一人で浮かれているんだよっ」
背後から首のあたりをぐいっと巻き付けるようにしてきた人物がいた。
「ぐ、ぐるしいよ、づちうら」
それはこのイベントに半ば強制参加させられた土浦だった。
「…この策士に少しくらい報復してもいいだろ?」
「…それで何回僕は息を引き取る寸前になればいいのかな?」
加地は困ったように笑いながら尋ねた。
あれから何回か同じような事を繰り返している二人なのだ。
加地の策略に嵌まったのが悔しいだけでないのは確かだが、そろそろ止めてもらわないと身がもたない。
だが、土浦はそんな加地を無視し、話をそらすように言った。
「で?今日は何をするつもりだ」
今回のイベントの企画と立案は、全て加地に任せている。
だから、どんなものか、と尋ねてみたのだが。
「えー、土浦にだけ教えるのはちょっとね。後でみんなが集まってらか言うよ」
とはぐらかされてしまった。
「…お前って案外ケチなんだな」
「ケチで結構。…ってなんでそこまで言われなきゃならないの」
加地は不満げに言ったが、土浦はそれを無視した。
土浦にしてみれば、加地には嵌められた仕返しをしてやらなきゃ、という思いもあるし、…これから一日、あの月森と顔を合わせていなければならないのだ。
せれを考えたら、本当はここに来るんじゃなかった、と思う。
春の頃よりは、月森という人間を知ってきたし、嫌いではない。
だが、最初に持ってしまった、苦手意識というのは、早々なくなる訳ではない。
…今日は一体どうなる事やら。
そんな事まで考えていながらも、どうしてここまで来たのか、というと…。
あの日からずっと頭の中に引っ掛かるものがあったからだ。
ふわりと自分に向かって微笑む姿。
…自分ではらしくない感情、相手を可愛いと思ってしまった。
それまでは、少し手間のかかる後輩としか見ていなかったのに、今では一番気になる存在になっている。
その彼女が、今日来るというのだ。…この加地の策略に乗せられた形になっだが。
今まではアンサンブルメンバーとして過ごしていたが、今日はそういうものではない。
嬉しいような、悔しいような、こそばゆい気持ちを隠したくて、こうして加地に八つ当たりをしてしまっているのだ。
そんな事を知らない加地は、ブーブー何かを訴えているが、土浦はそれを無視した。
「ま、お前の計画だからな、楽しみにしているさ」
そう土浦は言いながら、待ち合わせの場所にむかった。
「さて、と他の皆は来ているかな?」
加地が楽しそうに言った。
土浦も少しだけ心が浮き立つ。
…彼女は来ているのだろうか?
そして、待ち合わせ場所に到着すると、そこには冬海が待っていたのだった。
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