長編・シリーズ

□君を繋ぐ音楽
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1.再会

「あ、来た!土浦〜ひさしぶりっ」
久々に母校にやってきた土浦は、校門に入ると、そこで待っていた火原に飛び付かれた。
「…お久しぶりです、火原先輩。相変わらずですね」
「まあね〜」
火原は高校の時から変わらない人なつこい笑顔を見せた。
二人は挨拶をかわすと、そのまま校舎の中に入っていった。
「そういえば、他のメンバーはどうですか?」
「柚木は仕事の関係で少し遅れるって。志水くんはまだ来てないみたいだけど、来るって言ってたから。加地くんはもう来て先に行ってる。…冬海ちゃんは」
火原はそう言うと、ちらりと土浦を見た。
すると、土浦はぽりぽりと頭をかきながら、曖昧に笑った。
「…今日は病院に行ってからこっちに来ますよ」
「病院?病気なのっ?」
火原が焦ったように尋ねてくると、土浦は困ったように視線を逸らした。
「あー来たら分かりますよ」
「?」
「まあ、とにかく急ぎましょう。遅れたらあの人がうるさいですよ」
土浦は話題を逸らすかのように、背中を押したのだった。


二人が向かったのは理事長室。
中にいるのは、相変わらず気難しい顔をした吉羅理事長と。
「お久しぶりですっ」
相変わらずの明るい笑顔で迎える加地がいたのだ。
「あー、加地くん、お久しぶりっ」
「お前も変わらないなぁ」
「土浦もね。…と他の人はまだなんだね」
そんな事を話していると、土浦達の背後のドアがノックされた。
そして、入ってきたのは、柚木と、志水、そして、冬海だった。
「やあ、久しぶりだね、土浦くん」
「…どうも」
意味ありげな柚木の視線に土浦は戸惑う。
そして。
「お久しぶりです、土浦先輩!そして、おめでとうございます」
「…ああ」
土浦は返答に困った。
そして、火原と加地への返答にも困った。
「ふ、ふ、冬海ちゃん、そのお腹ーーっ!」
「ま、ま、ままさかっ、土浦、きみっ!」
「…お察しの通りですよ…」
土浦は深くため息をつきながら、冬海の側に立った。
そして。
「少し前に入籍して、間もなく子供もできました」
「…と言う事です」
冬海は照れ臭そうに微笑んだ。
「お、おめでとう」
「…ってなんだか計算合わない気が…」
加地の指摘に二人はどきっとしてしまう。
だが。
「積もる話があるのは分かるが、そろそろ本題に入らせて貰おうか」
理事長の無機質な言葉に助けられたのだった。
「皆、揃ったようだな」
「…あの、月森くんと日野さんがまだ来ていませんが…」
柚木がメンバーの顔を見ながら言うと、理事長は無機質な声で答えた。
「月森くんは海外にいて、今日は来られない。日野くんも遠方にいるために同じだ。今回の話は二人には後で話を私から通しておく」
「…は?」
集められたメンバーは相変わらずの理事長の話の進めかたに戸惑いを覚えたのだった。
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