長編・シリーズ

□君を繋ぐ音楽
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8.君と繋ぐ音楽

急展開な話を、対談の仕事で会った加地と天羽に話をすると…、案の定爆笑された。
「いやいや、本当にすごいスピードだ」
「F1レーサーもびっくり!よねぇ」
「…」
蓮はこの二人に話した事を後悔した。
よもやここまで爆笑されるとは思わなかった。
更に…。
「万年バカップルだとは思っていたけどさ」
「実は永遠の新婚さんいらっしゃい、でしたって?」
とまで言われ。
蓮は更に不機嫌になる。
「やだなあ、そんなに怒らないでよ」
蓮の機嫌急降下に、加地が笑ってとりなした。
「そこで対談止めたとか言わないでよ?」
…言いたかったのを我慢して、蓮はジロリと二人を睨んだ。
「…早く始めようか?」
これ以上二人に玩具にされる前に仕事を終わらせよう。
そう思っていたのだが。
「そうだね。月森も早く仕事を終わらせて、日野さんといちゃいちゃしたいだろうし」
「…」
…本当に余計な事を話してしまったと、蓮はつくづく後悔したのだった。

一通りの対談を録音すると、今度は加地と蓮の写真を撮り、…スタッフとして来ていた女性達のため息を誘った。
「んふふ〜♪被写体がいいと、写真を撮り甲斐があるってもんだねぃ」
嬉々としてシャッターを押しまくる天羽に、蓮はため息をついた。
「…相変わらずだな、天羽さん」
「あ、なあに?変わらないのが悪いのかしら?」
「い、いやそういう訳では…」
「だよねぇ、日野さんが変わらずに月森大好きなのは嬉しい訳だし?」
「…加地?」
蓮は加地を睨むが、加地はけろりとした表情で更につけ加えた。
「あ。変わったか。更に月森好きに拍車がかかったもんね」
「…」
反論しても、この『評論界のファンタジスタ』に口下手な自分が勝てる訳がなく。
蓮は話題を変える事にした。
「そうだ、天羽さんに一つお願いがあったんだ」
「あら、何かしら?」
蓮からのお願いなんてかなり珍しい事で、天羽が軽く目を見張らせていると、蓮は淡々とその『お願い』を話した。
「俺と香穂子のその…結婚写真を撮ってもらいたいんだが…いいだろうか?」
「あら、そんな事?いいわよ」
あっさりと受けられてしまい、蓮は少しだけ拍子抜けしてしまった。
「い、いいのか?」
「いいもなにも、ねえ?」
天羽はそう言うとニヤリと笑った。
「月森くんと香穂子のそんな大切な写真、私以外で誰が撮るってのさ?というか近々私が強制しちゃおっかなぁって思っていたし」
「…そ、そうか」
蓮はその意気込みに、ほんの少し眩暈を起こしそうになった。
だが、これで、一つの課題はクリアした訳で、蓮はほっとした。
そして。
試しで撮ったポラロイドを確認していた天羽が更に言葉を紡いだ。
「そうだ、これは私たちからの提案なんだけどね…」
そう言って切り出された天羽の提案に、蓮は目を丸くした。
だが、それは決して悪いものではなくて。
「…そんな事お願いしてもいいのか?」
と、逆に聞き返してしまった。
「ぜーんぜん!というか是非お願いします」
「こちらこそ頼む」
「…と、話がまとまった所で、色々算段を始めますか?」
そう言いながらニヤリニヤリと笑う加地と天羽に、依頼した事を少し蓮は後悔したのだった。
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