長編・シリーズ

□reunion
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4.合宿〜2日目

香穂子との約束の為に、蓮はいつもより早めに起きなければ、と思っていた。
確かにその為に目覚まし時計もセットした。
そして、合宿二日目の朝、その時計が、起きろ!と言わんばかりにけたたましい音が鳴った。
「う…ん…」
蓮は布団からにゅうっと手を出して、その目覚ましを消そうとした。
だが、音の鳴る辺りまで手を伸ばしたはずなのに、時計が手に触れない。
…もう少し先…か?
さらに手を伸ばしてみるが、指先にも触れない。
…こんなに遠くに置いただろうか?
蓮が不思議に思っていると。
「おいっ」
目覚ましで起こされた土浦の不快そうな声が聞こえてきた。
「いい加減とめ…ふがっ」
ところが、その土浦の声が不自然に止められた。
自分の意思ではなく、何かによって止められたような感じに、蓮は不自然さを感じ、うっすらと目を開けた。
「…?」
確かこの視線の先に、土浦の寝ていたベッドがあって、確かそこに寝ていた、はず。
いや、確かに土浦はそこにいたのだ、が。
蓮とは違う場所に視線があって、さらに呆気にとられていた。
…一体何があるというのか?
そう思いながらも、なかなか頭が回らない。
…いや、今は土浦の事より目覚ましだ。
さっきから止まない音に、蓮は眉を寄せながら、周りを見回した。
確かベッドの隣、サイドボードの上に乗せたはず…。
と、顔をそちらのほうに向ける。
だが、そこにはない。
…何かの拍子に落としてしまったのだろうか?
そう思って更にサイドボードの下に視線を落とすが、…何もない。
「…?」
おかしいと思っていると、頭上から声が降ってきた。
「何を探しているの?」
クスクスと笑いながら尋ねてきたので、蓮はぼんやりと答えた。
「時計…を探して…?」
そう答えながら、蓮は不思議に思った。
この声は聞き覚えがあるが、土浦のものではない。
土浦はもう少し低くて落ち着いた感じだ。
だが、この部屋は二人部屋で、自分と土浦しかいない…はず。
蓮はそこまで考えて、慌てて体を起こした。
そう、この部屋には自分と土浦しかいない!ならこの声の主は誰だ?
そう考えながら、辺りを見回す。
だが、その声の主らしき人物は見当たらない。
慌てる蓮の背後から、再び声が聞こえてきた。
「何を探しているのかな?」
「…ってその声は!」
蓮が声のしたほうに慌てて振り返えろうとした、が。
ぎゅっと背後から抱き着かれてしまったのだ。
「なっ」
「やほー、月森っっ。土浦に誘われたからやって来ちゃったよ」
声の主は楽しそうに言った。
だが、その声に慌てていた気持ちも落ち着いてきた。
それは側で様子を見ていた土浦も同じだったようで、蓮と連動するかのようにため息をついた。
「…とにかく、話は後で聞くから、離れてくれないか?加地」
蓮がそう言うと、声の主、いや加地が少し不満げに言った。
「もう、もう少しリアクションが欲しいんだけどなぁ?」
…いや、それよりも何を考えているのか。
その時、土浦と蓮の気持ちが見事にリンクしたのだった。
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