長編・シリーズ

□reunion
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「あ、いや…これはその…」
「はいはい、なかなか戻ってこないのを心配した僕達を忘れて、二人イイコトしてたんでしょ?」
蓮や香穂子が言い訳しようとしたが、加地はそれを聞いてくれない。
「だから、誤解してるでしょ?」
「何が?」
「だから、これは腰を抜かした私を月森くんが助けてくれた訳で…」
「ええ?日野さん腰抜かしたって…、月森って凄い…」
「…加地?」
一体何が言いたい?と、蓮は言葉でなく態度で示した。
すると、加地はカラカラと笑い出したのだ。
「はいはい、分かってますって。単純に何かがあって、日野さんが腰を抜かしたんでしょ?まあ、二人の間に、僕に言えないような事がなかった事は分かったから、うん」
加地はしたり顔で答えた。
「…なんでそんな…」
「えー?そんな事があったら、二人ともそんな平然としてないで、もっと動揺してたでしょ?それ位で済むんだったら、そんなやーらしい事はなかったって分かるよ」
…ならおかしな方向にツッコミをいれるなっっ!
蓮と香穂子はため息をつきながらそう思ったのだった。

それからようやく合宿所に到着すると、心配そうに冬海達が近づいてきた。
「おかしな光の玉が見えた、とか、いきなり楽器が鳴り出したとか…いろんな話をみんながしていたんで、心配してたんですよ」
ようやく自分で立てるようになった香穂子は、蓮に下ろしてもらいながらその話を聞いた。
「変だよねぇ、僕達、そんな仕掛けしてなかったのに」
加地が不思議そうに言うので、香穂子と蓮は顔を見合わせた。
そんな二人を見て、土浦と冬海は原因というか、元凶というか…が分かったようで。
「まさか、アレが原因か?」
「もしかして…先輩…リリちゃんが…」
そう質問してきたのだ。
香穂子がコックリと頷くと、土浦も冬海も大きなため息をついた。
「あいつは相変わらずだな」
「本質はいい子なんですけどね…、ちょっといたずらすぎるというか…」
「え?何?みんな光の玉の理由分かったの?」
加地がついていけずに、そう尋ねると、四人は深いため息をついた。
「分かるが…理由は聞かないでくれ」
「え?なんで?」
「…聞くと疲れがどどっと発生するようなもんだから」
香穂子は先程あった事を思い出し、うなだれながら答えた。
「なにそれ?」
「ああ、そんなことはいい。それより全員戻ってきたんだ。これで解散にしようぜ?」
土浦がその場をごまかすように言うと、加地は少しむくれた。
「土浦のケチ」
「あー、はいはい。とにかく明日もあるんだ、今日のところは解散だ、お疲れさん」
土浦が加地の変わりにそう言うと、その場にいたメンバー三々五々帰っていった。
その帰りしな、その光の玉の正体を熱く語り合う仲間を見て、香穂子達は複雑な気持ちになりつつ、部屋の中に入った。
そして。

シャワーを浴びて布団の中に入っても、香穂子は今日の出来事を思い出し、なかかな寝付くことが出来ず。

…こうして、複雑な思いを皆に残し、合宿二日目の夜は更けていったのだった。
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