長編・シリーズ

□reunion
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6.合宿最終日

『激情』という言葉を形にして表すのなら、今、この瞬間の二人ではないだろうか。
蓮の突然とも思える行為に、香穂子も抵抗しなかった。
……いつかはこうなりたいと思っていた。
香穂子は熱くなる体とは反対に、どこか冷静な頭の中で考えていた。
そう、私は彼に愛されたかった。
熱いキスを交わし、燃える想いそのままに抱き合い、ひとつになれる事を願っていた。
朝になって、どこかがズレているとか、間違った事をしたと思っても、今、この瞬間はこの激情に身を委ねていたかった。

蓮の指が、唇が香穂子を翻弄するたびに、香穂子の口から熱い吐息が吐き出される。
その吐息が蓮を更に煽り、香穂子の体を熱くする。
そして、香穂子の熱が蓮の熱を呼び起こし、…二人は今までに味わった事のない快楽に、感覚が麻痺していく。
「…香穂子…」
様子を伺うように囁かれる名前は、何かを抑えるかのように掠れていた。
その声は、普段の冷静な蓮のそれとは事なり、香穂子の中の欲情を呼び覚ます。
…もっと暴きたい。…彼の熱情を。
…もっと暴いて欲しい。私の激情を。
香穂子は蓮の首を抱き寄せ、囁くように言った。
「…蓮…」
それは初めて口にする、愛する人の名前。
ずっと言いたくて言えなかった、大切な名前を囁いた時、香穂子の中で何かが弾けた。
…それは、香穂子に名前を囁かれ、更に感情を爆発させた蓮が、熱く香穂子に触れたせいだった。
「…んっ」
香穂子が我慢出来ずに声を出すと、蓮は口づけでそれを抑えた。
「…そんなに大きな声を出したら、隣の部屋に聞こえてしまう…」
それがキスの理由だったようだが、香穂子はその言い分が納得できなかった。
「それは…蓮っがっ…んっ…」
蓮は香穂子に抗議を言わせない為に、再び口を塞いだ。
深くなるキスに、香穂子は目眩を起こしそうになる。
ようやく離してくれた時には、香穂子の息はかなりあがっていた。
「…蓮の意地悪…」
「…人ぎきの悪い事を言わないでくれ。俺のどこがいじわ…っん」
香穂子は少し悔しくて、蓮を引き寄せ、今度は香穂子からキス攻撃をしてみせた。
そして、蓮の唇をたっぷりと堪能すると、静かに体を離しながら言ってのけた。
「…こういう事をするあたり…よ?」
悪戯っ子のように目を輝かせる香穂子に、蓮は更に煽られたようで。
「…どちらが意地悪なんだか…」
そう呟きながら、蓮は香穂子の体のあちこちにキスをした。
「れ…ん…」
香穂子は求めるように蓮の頭に手を乗せた。
「…香穂子…いいか?」
何がいいのか?
そんな事は聞かずにもわかる。
香穂子こそ、もう大分前から欲しくて欲しくてたまらなかったから。
でも初めての行為でかなり恥ずかしくて、言葉にする事はできない。
だからほんの少し蓮から視線を逸らすようにし、コクリと頷いた。
…ちゃんと伝わっただろうか?
僅かな反応に気づいてくれないかも、と少し不安になって、蓮の様子を伺うと。
蓮は瞳を艶やかにきらめかせ、香穂子を見つめていた。
「…香穂子…」
蓮は再び深いキスを香穂子に贈った。
そして…。

二人は生まれて初めて、誰かと一つなる快感を感じたのだっだ。
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