長編・シリーズ

□reunion
97ページ/153ページ

7.テンペスト

合宿明けの翌日、香穂子は待ち合わせの噴水前で天羽を待っていた。
久々の親友との女の子デートに、ちょっとだけドキドキしている。
それは、理由はそれだけでないからかもしれない。
どれから話そうか。
自分の事も話したいけれど、天羽の話も聞いてみたい。
さて、どうしようかしら?
そう考えている香穂子の視線の先に、天羽が見えた。
あちらも香穂子のいる場所が分かったらしく、嬉しそうに手を振りながら近づいてきた。
「香穂子〜、久しぶり〜」
「天羽ちゃ〜んっっ」
近づくなり、二人はがしっと抱き合った。
「よかった、元気そうで」
「そっちこそ」
二人とも何となく照れ臭くて、笑いあって小突きあった。
こんな時、親友っていいなぁと香穂子はしみじみ思ってしまう。
「まあ、積もる話もあるし、ここじゃ何だから、どこかお店に入ろうか?」
天羽にさそわれ、香穂子は頷いた。
そして、二人は近くのカフェに入った。
お昼近くという事で、ランチメニューを注文し、それから徐に話し出した。
「昨日まで合宿だったんでしょ?どうだったの?」
「どうって?」
「んー、まずはコンサートに向けて順調なの?」
「まあまあ、かな。まだバッチリって訳じゃないけど、ま、何とかなるでしょ?位にはなった、かな?」
「ふむふむ。土浦くんのマエストロぶりに期待、かな?」
「あはははっ。でも、冬海ちゃんのかわいいサポートがあるんだもの、頑張るっきゃないでしょ?」
「あー、相変わらず可愛いお付き合いしている訳だ」
「そうそう、合宿でね…」
香穂子は合宿であった話を天羽に話した。…自分の話以外を。
天羽は何気なくその話を聞いていたが、その不自然な話に気付かないはずはなく。
「なるほどねぇ、で?」
と香穂子に尋ねた。
「で?」
天羽が聞きたい事は分かってるし、話したいが、どう説明すればいいのか分からなくて、結局逃げるように惚けてみせると、天羽が焦れたように核心をついてきた。
「月森はどうしたの?同じ合宿に参加していたんでしょ?そんな状況で何も無かったなんて言わせないわよ?」
天羽の相変わらずの追求っぷりに、香穂子も思わずたじたじとなった。
「あんたが月森くんの話をあからさまにしないんだもの、絶対何かあるに決まってる。支離滅裂でも順不同でも目茶苦茶でもいいから話しなさい?というか、私に会いたいって言い出すには、それなりに理由があったんでしょ?」
「…そこまで読まれてた?」
「あったりまえでしょ?何年あんたと友達していると思っているのさ?さ、なんでもいいから話しなさい?愚痴でもなんでも」
天羽が、ぽん、と香穂子の肩を叩いてみせた。
その肩に乗せられた手の重みに香穂子はほっとした。
何があっても、あんたとは友達だから。そう言われているようで。
「実はね…」
香穂子はぽつぽつと話しだした。
合宿であった様々な事を。
そして、あの一夜の出来事を。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ