長編・シリーズ

□reunion
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「…」
香穂子の話を聞き終えて、天羽は絶句してしまった。
「…やっぱりびっくりした?」
「びっくりしない訳ないじゃない?!え?何?何がどうしたらそういう関係になるのさ?」
「いや、私に聞かれても…」
香穂子は困ったように笑いながら答えた。
それが分からないから、香穂子は今、悩んでいるのだ。
「れ…月森くんもお酒飲んでいたから、…こういう事を考えたくはないけれど、その…勢いっていうのもあるじゃない?加地くんが変に煽っていたっていうし…」
「加地くんのお馬鹿な行為は…まあ、置いといて」
天羽はうーん、と唸りながら、自分の恋人に失礼極まりない事をさらりと言った。
そして、一息いれた後、真剣な眼差しとなって、話を続けた。
「でも月森くんってお酒は飲んでも飲まれるなってタイプっぽいし、その確率は低いと思うよ?」
「そうかなぁ?」
香穂子はからからとアイスティーの入ったコップの中の氷を回しながら考えた。
「まあねぇ、確かにお酒がいつもはがっちり抑えているはずの、鉄壁の理性という名前の壁を、薄い紙にしちゃうかもしれないけど、あのストイックで真面目で朴念仁で唐変木の月森くんだよ?欲望だけってのは百パーセントないと思う」
「…そうかな?」
「そうよ!…ってまずはあんたが信じてあけないと、月森くんがかわいそうよ?」
天羽は悩む香穂子の肩を叩きなが言った。
「…まあ、月森くんが、女の子を押し倒しちゃう、結構狼さんだった事が衝撃的だったけどね」
「…狼さん…」
香穂子は天羽の言葉に苦笑した。
「いやいや、加地くんみたいな感じなら、分からないでもないけれど、加地くんて、あれでいて結構純情一直線だし…狼さんにはちょっと遠い感じなのよねぇ」
「そうなんだ?」
加地の意外な側面を見て、香穂子は目を丸くした。
「見えないでしょ?プレゼントとかなんとか、シチュエーションとか凝る割には、手を握るだけでかっちんこっちん。最近は慣れてきたけど、ぶっちゃけ私より乙女モードかもね」
「あははっ、天羽ちゃんはきっぱりさっぱりって感じだからね〜。でも、ちょうどいいんじゃない?」
「えー、そうかな?でもやっはりリードしてもらう所はちゃんとリードしてもらいたいわよ、私でも」
「うんうん。それ分かるわ〜。あ、でも加地くんなら大丈夫よ。いざとなったら、その辺りかなりびっくりする位のシチュエーションを用意してくれるわよ」
「そうかな…って、いや、私達の事はどうでもいいのよ、問題はあんたと月森くんの話!」
天羽は脱線しまくった話を、半ば強引に引き戻した。
少しは話をそらし、なおかつ親友の恋愛話を聞きたかった香穂子は、ちっと舌打ちした。
「…今の舌打ちは聞かなかった事にしておいてあげるわ。それで、月森くんだけど…多分、香穂子の事、ちゃんと考えていて、でもシチュエーション的にそうなってもいいって思ってた、多分そんな感じだと思うよ?」
「…そうかな?」
私と同じ事を考えていたのかな?
香穂子はあの時の蓮の様子を頭に浮かべながら考えた。
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