拍手・短編

□トリプルデート大作戦
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「…は?」
「だって、月森くんてばいつもクールだから…びっくりしたり困ったりする所を見て見たかったの。ただそれだけ」
「…それだけで、こんなに大騒ぎしたのか?」
呆れたように月森が尋ねると、香穂子はむっとしながらそっぽを向いてしまった。
「女の子の一世一代の大胆な申し出をするのに、色々考えたんだからね、これでも」
…恋人と内緒の一夜。それを女の子から申し込むのだから、それ相当の勇気がいる。
恥ずかしいし、照れ臭いし、それになにより、…断られたらどうしよう、そんな気持ちもあるのだ。
それをなんとか攻略するための作戦を、『それだけ』の一言で済ませられてしまっては心外だ。
「それは…その…」
月森は言葉を詰まらせた。
「しかし…香穂子、もう少しやりよう、があっただろう?…いや、まあ、君のおかげで、俺は思いもかけない時間を君と過ごせる訳だが…」
「…そうでしょ?だからそう言い訳がましい事を言わないで?」
「…あ、ああ…だが…」
まだ少しは言っておきたい事があった、が。
「…そうしたら…今夜は忘れられない夜にしてあ・げ・る?」
今までにない位、やたらとなまめかしい声と、艶を含んだ視線に、…情けないが何も言えなくなってしまった。
そして、そんなタイミングで、コンパートメントのドアがかちゃりと開き。
「どうもお疲れ様でしたー」
やたらと元気のいい、キャストの声が聞こえてきたのだった。

二人が観覧車を降りると、既に降りていた四人が二人を待っていた。
「お待たせしましたぁ」
「…」
「お疲れ様って…月森、どうかしたの?」
先程の香穂子の爆弾発言に動揺しまくりつつも、一生懸命平常を装っていたのだが、加地に目敏く指摘されてしまった。
「な、何でもない」
…どう見ても『何でもない』様子ではない月森に、加地はニヤリと笑ってみせた。
「…って感じじゃないけれど…もしかしたら、二人っきりのコンパートメントで、いけない事でもしちゃったのかなぁ?」
「な、な…何を」
「あら、分かっちゃった?」
香穂子は負けじとニヤリと笑い返した。
「ちょっと月森くんに色仕掛けを…」
「香穂子っっ」
悪ノリする香穂子に、月森は頭を抱えながら注意をすると。
「…あーはいはい、そういう事にしておきますか」
からかうのも馬鹿馬鹿しくなった加地が、呆れたように返事をしたのだった。

そして。

近くのファミレスで最後の大騒ぎをしたり。
実は、パーク内で、今日の記念を購入していた冬海が皆にそれを配ったり。
それに感激した香穂子と天羽が冬海をぎゅっと抱きしめたり。
それを見た土浦が、香穂子達を嫉妬混じりに咎める事で、土浦と冬海が付き合い出した事が発覚したり。
それを加地&天羽コンビでからかわれたりして。

「楽しかったね、またこういう事したいね」

そんな合言葉で解散となったのだった。
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