おはなし
□自転車こぎこぎ
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「「じゃんけん…」」
影山と日向は声を合わせた。
「「ポン!」」
日向が勢いよく出したのはチョキ。影山はパー。
「やった!」
勝利した日向は、抜群の跳躍力でピョンと飛びあがった。影山は自分のパーを見つめる。
そのパーの上に、日向は自転車の鍵をのせた。
「なんかムカつくんだけど」
「影山が自転車に乗せろって言ったんだろ」
「ああそうだよ。でも疲れてんのに、俺がこぐのかよ」
「今、負けたじゃん。それに俺も疲れてるもん」
「お前は疲れてるように見えない」
「なんで!?」
そんな言いあいをしながら、影山はスタンドを外し自転車を転がし始める。
「俺まだ乗ってないんだけど」
「早く乗れよ」
影山はうしろをポンと叩く。日向は慌てて跨がった。
自転車は勢いよく学校前の坂を下る。
日向は影山のうしろで「おー」とか「わー」とか楽しそうに叫んでいる。
「うるさい」
「だって楽しいじゃん」
「いいから黙ってろよ」
「なぁなぁもっと早く漕ごうよ」
「話聞いてんの?…わかった、お前振り落としてやるからな」
坂を下り終わった自転車の勢いは弱まることはなく、通りを一気にかける。振り落とすという言葉通り、影山は一生懸命に漕いだ。
「スピード落ちてきてる…」
眉間に皺をよせながら影山は振り返る。
「お前は楽でいいな」
「しんどいんだったら、交代してあげてもいいけど」
「しんどくない。それにあしたは俺が勝つから」
「あしたもやんの?」
「もちろん」
影山は、フフンとすでに勝ったような表情を浮かべた。
「あしたもあさっても覚悟しとけ」
end.