おはなし

□きみの名を呼ぶ
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「繋心くん…?」

俺はギョッとして先生を見た。
この人、今、俺の名前を呼ばなかったか?

「烏養くんって、繋心って名前でしたね」

携帯の画面を見て、先生は言った。
先生の携帯には、さっき赤外線にのせて飛んでいった交換したばかりの俺のアドレスが表示されているのだろう。

「烏養くんって呼んでたから忘れてました。初めに自己紹介したのに」

自嘲気味に笑った先生は、もう一度携帯の画面を見て微笑んだ。

「繋心っていい名前ですね」
「そうか?」
「だって、“心を繋ぐ”でしょう?」
「字のまんまだな」
「繋がりってことは、自分一人ではないってことです。誰かと心を繋げるってことなのかと思ったんですけど」

意味なんて考えたことなかった。

「なんか先生みたいだな」
「一応、先生なんですけどね」

そう言って、先生は笑う。

「だったら、これからは俺のこと、繋心って呼ぶか?」
「そうですね。繋心くん」

誰かに名前を呼ばれて、ドキドキしたのはいつ以来だろう。
俺がそんなことを考えていると、目の前の先生は首を傾げた。

「やっぱり、繋心くんより烏養くんのほうが、しっくりくるかも」
「さっきは俺の名前、誉めてなかったか?」
「それとこれとは別です。これからも烏養くんで」


誰かと心を繋げる。
なら俺は、あんたと繋げてみたいと思った。



end.

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