おはなし

□ショートケーキプラス
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9月27日、晴れ。
みんなには、何でもない日かもしれないけど、俺には大切な日。
そう、今日はツッキーの誕生日!


「ツッキー、お誕生日おめでとう!」

玄関の扉を開けた俺は、いきなりの山口の声にびっくりした。
ああ、そっか…今日は誕生日だ。

「ありがとう。あと、山口、声デカいから」
「え、ご…ごめん」
「別にいいけど。入る?」

家の中を指さす。

「うん、お邪魔します」

俺しかいない家の中は今日も静かで、山口が来ただけで騒がしくなった。
リビングのソファにふたりで座った。

「ツッキー、誕生日おめでとう!」
「それ、さっき聞いた」
「何回でも言いたいんだぁ。で、コレ、ケーキね」

山口は持っていた白い箱と袋を渡す。

「で、こっちがプレゼント!」

俺が好きなアーティストの新作CD。

「気遣わなくて、よかったのに」
「遣ってない、遣ってない!」
「ありがとう」

俺の言葉に、山口はうれしそうに笑う。
俺の誕生日なのに、山口のほうがうれしそうとか、ホント、

「変なやつ」
「えへへ」
「誉めてないから」

山口は、持ってきたケーキの箱を開け始めた。
箱の中にはイチゴのショートケーキ。

「ここのケーキ、すっごくおいしいらしいよ。ツッキー、食べよ?」

箱から出したふたつのケーキを、取ってきた皿にのせた。
そこで、山口は何か思い出したように「待って」と声をあげる。俺は、イチゴをフォークに突き刺した状態で山口を見た。

「歌、うたわないと」
「歌?」
「ほら、ハッピバースデ〜トゥ〜」
「いらない」

山口の口に、イチゴを突っ込んだことで歌は止まった。
山口は、もごもごと何か言ってるけど、よくわからない。

「……ツッキーのイチゴ、食べちゃった」
「いいよ、やる」
「じゃ、俺のあげる」

山口は、自分のケーキのイチゴをフォークに突き刺すと俺へと差し出した。
甘酸っぱいイチゴの味が、口いっぱいに広がった。

「うまいよ」
「でしょ」


今日は俺の誕生日。
このケーキがすごくおいしいのも、山口といっしょに食べているから。



end.

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