おはなし
□キューピッドと赤い糸
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「スガさんは、キューピッドっていると思いますか?」
「いないんじゃない」
俺の問いにスガさんは即答した。
「てか、田中からキューピッドって言葉聞くとは」
「そんなに変スか?」
「変」
「ちなみに、俺はいると思うんです。どうやらキューピッドの矢が刺さったみたいで」
そう言って、俺は胸を押さえた。
「ふーん、そう」
「興味なしッスか?」
「ない」
「誰に対しての恋心かというとですね、」
俺はめげない。
「スガさんです」
「………」
その反応は予想してた通りなんですけどね。
「俺に刺さったように、もしかしたら、スガさんにも矢が刺さるかも」
「鉛の矢だったりして」
「鉛?」
スガさんは「知らない?」と続けた。
「キューピッドに金の矢を射られると恋をして、鉛の矢を射られると嫌いになるんだって」
「知らなかった…」
「俺、キューピッドのせいで田中のこと嫌いになるかもね」
スガさんは楽しそうに笑う。
「やっぱり俺はキューピッド信じないことにします」
「あっそ」
「ちなみに赤い糸は信じますか?」
「もし田中と赤い糸がつながってるんなら、」
スガさんは右手でハサミの形を作ると、立てた左手の小指の先の、見えない赤い糸をチョキンと切る仕草をした。
「切ってやる」
「えー!!」
「なんてね」
end.