おはなし

□エースの奢り
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挨拶とともに、本日の部活が終わった。
部室に向かおうとした西谷を旭が呼び止めた。

「西谷、今、何が食べたい?」
「え?今ッスか?」

聞き返した西谷に、旭はこくこくと頷く。
なんだかよくわからない質問だと思いながらも、西谷は考えた。

「腹いっぱいになるなら、なんでも」

その答えは旭が欲しかったものではなかったらしく、慌てて背後の大地へと振り返った。

「なんでもって、言われたけど…」
「なんでもじゃなくて、ちゃんと聞けって言ったろ」
「ちゃんと聞いて、なんでもって言われたんだって。な、西谷」

同意を求められ頷くと、大地が「西谷」と呼びかけた。

「奢りだからって、遠慮しなくていいから」
「奢り?」

話が見えない西谷は、疑問ばかりが浮かぶ。
そんな西谷を見てから、大地は旭へと向き直った。

「ちゃんと説明しろとも言ったよな」

黒い笑みの大地に旭が怯んだ。

「聞いたかな…」
「かなじゃなくて、言ったよ」

大地に「説明」と急かされながら、旭が話はじめた。

「今日は西谷の誕生日だから、みんなで西谷に何か奢ろうって話をしていて」
「えぇ!マジですか?」
「うん。西谷、誕生日おめでと」
「うわ〜ありがとうございます。でも、奢ってもらっちゃって、本当にいいんスか?」

旭が答える代わりに、大地が返事をした。

「いいよ。旭の奢りだから」
「俺!?」
「お前、エースだろ?」
「エース関係あるか?」
「ある」

自分の誕生日を祝ってくれるらしい先輩たちを前にして、西谷は自然と笑みがこぼれた。

「ゴチになります!エース!」



end.

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