お題
□05.不意打ち
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目の前に大地が歩いていた。
声をかけようかと考えてやめた。もっと、いいことを思いついたのだ。
きっと大地は、うしろに俺が歩いていることに、まだ気づいていない。
「大地」
名前を呼びながら、俺は大地の背中に抱きついた。
前のめりになりながら、振り返った大地と目が合う。驚いたみたいで、その目はおもいっきり見開かれていた。
「ス…スガ!?」
「ちょっとびっくりさせようかなと思って。びっくりした?」
「すごくした」
「なら成功」
俺は満足して大地に回した腕を放した。
それと同時に大地がくるりと向きなおる。
なんだろうと思った瞬間、頬にあたたかい感触とチュッというちいさな音。
それがなにか、わかったときには今度は大地が満足そうな顔をしていた。
「なにしてんの!」
「びっくりしたか?」
「し、してない。全然してない」
「じゃあ、もっとびっくりするようなことでも」
「しなくていいよ!」
「それは残念」と笑う大地を追い抜き、俺はズカズカと歩いた。
end.