お題
□1.澄んだ声に、
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「大地」
スガが俺を呼ぶ。
「大地」
俺を呼ぶ、この声が好きだ。
「聞いてる?大地!」
気づけば、スガが俺の顔を覗き込んでいる。
俺は、聞いてると慌てて頷く。
「今の話、聞いてた?なに考えてたのさ?」
「スガのことかな」
本当のことを言ったのに、スガは嘘だと笑う。
「俺の話が面白くないんだったら、そう言えばいいのに」
「そんなことないって」
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと。それで、どうなったんだよ?」
「ああ、それでさ、」
スガは、また楽しそうに話しだす。
学校の勉強のこと、バレーのこと、後輩たちのことに、俺のこと。
話の内容は次々と変わり、時間はあっという間に過ぎる。
スガの話を聞くのも好きだし、もっとスガと話たいとも思う。
「大地」
スガがまた俺を呼ぶ。
「なんだか楽しそうだね」
「お前と話してると楽しいからな」
「ほんとだと嬉しいけど」
「だから、ほんとだって」
スガが楽しそうに笑う。
その声が聞きたくて、俺はスガに話しかける。
澄んだ声に、恋をした。
end.