DIABOLIK LOVERS ワンライ

□6/29 『夕涼み』
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「あっぢぃ〜」
「そうだねぇ……」
「うん……」
「もーー!!こんな時にエアコンが壊れるとかありえないからーー!!」

無神家屋敷。
夏真っ只中のこの季節にエアコンが壊れたという悲報が舞い降りたのはつい数時間前のことだ。
お盆ということもあり業者もお休み。使い魔も流石に人間の発明した道具には太刀打ちできないらしい。
それでもなんとか直そうとルキくんとユーマくんが奮闘していたけど、両手を上げたのはつい先程。ルキくんには珍しく額に汗をかいていた。

「まさかお盆が終わるまでずっとこの調子じゃないよね……」
「残念なことに明日も明後日も野菜に嬉しい夏晴れだってよ」
「俺もう死ぬ……」
「コウ……死んじゃダメ……」
「ア、アイスでも持ってこようか?」
「さっき俺らが全部平らげた」

ユーマくんが指さす方を見るとルキくんに怒られそうなくらいゴミ箱にアイスの棒や包装紙が山積みになっていた。折角昨日買い溜めしたのに……。

「そういえばルキくんは?」

家中の窓という窓を開け放した結果、一番風通しの良いリビングに集まっているのは私とコウくん、ユーマくん、アズサくんだけだ。

「知らね」
「そういえば見てないね」
「さっき……出かけてくるって……」
「は? まさかルキの野郎、一人で外に涼みに行ったんじゃねぇだろうなぁ……!」
「ほう、お前の中では俺はそんなに薄情者なのか、ユーマ」
「うお!!」

飛び上がったユーマくんの背後にいつの間にか佇んでいたルキくん。
その姿に誰もがポカンと口を開けた。

「ルキくん……その格好は……?」
「甚平だ。知らないのか?」
「いや、勿論知ってるよ?うん。この間雑誌のモデルで着たし。ってそうじゃなくて!どうしてそんな格好してるのかっていうことが聞きたいの!!」
「こんな時だ。たまには夕涼みでもしようかと思ってな」


ーーーそんなこんなで夕涼み大会が始まったのです。


ルキくんが買ってきてくれた甚平にみんな着替えて庭に集合。私にもわざわざルキくんは浴衣を買ってきてくれた。皆の(主にコウくんの)申し出を断り、着替えは使い魔さんに手伝ってもらった。

外に出ると物置にしまってあったという竹で作られた素麺流しをセッティングするユーマくんが出迎えてくれた。ビニールプールに浮かぶ水と氷とまぁるいスイカ。それを眺めるアズサくん。コウくんは下駄を鳴らしながら花火を抱えて、その後ろからルキくんが素麺を運んでくる。

「わ、私は何をすればいいかな」
「おおー!エム猫ちゃん浴衣ちょー似合ってる☆ 折角ルキくんが買ってきてくれた浴衣汚しちゃまずいから座って待ってなよっ」
「でも……」
「ユーマのセッティングが終わればすぐに流し素麺だ。場所取りでも今のうちしておくんだな」
「イヴ……一緒に……スイカ食べよう……?」
「アズサ、それは素麺の後だ」
「できたァ!オラ、さっさと流し素麺やんぞ!!」
「やったー!!」

流れてくる素麺の取り合いやスイカの早食い、誰が一番長く線香花火を落とさずにいられるか(何回やっても一番最初に落ちるのはユーマくんだった)と、いつの間にか暑さを忘れてはしゃいで、日が暮れても使い魔さんたちが紅い灯りを点けてくれて。

夢のような浮世離れした夕涼みは、空が白んでくるまで続いた。

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