黒バス

□迎える朝
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右腕にかかる重みがとても愛しい。酷い睡魔に襲われるが眠ることが勿体ないように感じていた。そばにある温もりを逃すことのないように、ぎゅっと抱き締める。
彼女が起きてしまうかもしれないとも思ったが、こうでもしていないと昨日の夜から今日の朝方にかけてのことは自分の妄想から来る壮大な夢になってしまいそうで…たまらず抱き締める手に力を込める

ん、と身動ぎする名無しさんを見て頬が緩む。こんな顔見せらんねぇなぁ…とか、こんなに密着して彼女を楽しめる時間があったのならば服着せないまんまの方が良かったかもーとか邪な気持ちが過ってしまうのはまぁ、仕方がないことだ。

初めてが嬉しくて、早朝まで離してあげられなくて、最終的には意識を手放した名無しさんをバスルームまで運び軽く汗とか色々流してあげて、着替えはなかったので俺のTシャツを着せてみたはいいもののそれはそれでグッと来るものがあった。
実際、名無しさんが俺の腕の中で意識手放した時はめちゃくちゃ焦った…これで嫌われたらどうしよう、とか無理させちゃったな…とか色々考えたけど彼女が俺のことを好いてくれていることは分かっているし、きっと大丈夫なはずだ。うん、多分…ちょっと怒られるかもしれないけど。

人の温もりは不思議と睡魔を誘ってきて、この寝顔を思う存分堪能しようと意地を張っていた両目も少しずつ落ちてきた。あー幸せってこういうことなのかな…今までだって手をつないだり、抱きしめたり、キスもした。散々触れあってきたけどやはりあれは特別な意味を持つものだったわけで。20歳になるまで我慢とかワケわかんない誓いをたてていた分、これからは大変なことになりそうだ。今まで自分を抑えていたストッパーが外れてしまったのだから


また抱きしめる両腕に少しだけ力がこもってしまったのか吐息を零しながら自分の胸にすり寄ってくる名無しさんを見ていると、とても幸せだ。世界中に叫んだっていい、俺は幸せですってできることなら今すぐにでもベランダで叫びたいくらいだ。
そんなことしたら名無しさんに怒られるから止めておくけど

あー本当に嬉しい…なんかめっちゃ気持ちいーし。
じんわりと湧き出るような暖かい想いごと名無しさんを抱きしめて眠りにつく






「…おーい、普通さここは俺が起きたら目の前で真っ赤になった彼女がなんか俺を見てわたわたするってシチュじゃないのかなー?名無しさんちゃん」

どの位寝ただろうか、朝方で差し込んでいた陽射しが傾いているのでもう午後になっているのだろう。普段から早寝早起き、寝るのも好き、な名無しさんのことだからあんまり驚きはしないけど、さすがに寝すぎだと思うのだよ名無しさんちゃん。

あなたの高尾が待ってますよー
あなたの高尾が寂しがってますよー

このままだともっかい…とか暴走しちゃうよ?

って小さい声で話しかけてもとうの彼女はどこ吹く風。まだ気持ちよさそうに寝息を立てている。

「寂しいんですけど…」

ぼそっと独り言。
確かに原因は俺が作ったかもしれないけどもうちょっとさ、二人でまったり甘い時間みたいなの?あってもいいんじゃねーの?
―って、乙女かよ…

「起きろよ、なぁー…襲っちゃうよ?」

ちゅっと小さいリップ音を落として鼻先にキス。した後に今度は額、頬にキス。頬を包み込む両手がポカポカする。いつも思ってたけど体温高けーな…ははっ、子供みてー

寂しいのには変わらないけどやはり彼女に触れていると少しは気持ちは落ち着くもので。でも今度はもっと、もっと、って気持ちが大きくなってしまう。

「んっ…は、ぁ。愛してる、名無しさん」

「っ、んぅ、た…かおくん…?」

少ーし深い口づけをして、やぁっと開いた可愛い瞳。

「ん、高尾です。なぁー俺寂しかったんですけど…」

キスの余韻か昨日の余韻か、ぼーっとこっちを見ている彼女にまた熱が上がる。あー、もう…

「可愛すぎ。」

ぎゅって強めに抱き締めてやるとポカポカしている体。そして胸に当たる彼女の吐息が愛おしい

「なぁ、ごめん。体辛くないか…?大丈夫?」

「っ…!!!」

内緒話をするみたいに小さく耳元に問いかけて、分かりやすいほどにさらに赤くなった頬にキスをひとつ。ついでにさらりと腰を撫でると声にならない叫びをあげる名無しさん

「だーかーらーそういうのがダメなんだって。な、もっかい…シよ?……ダメ?」

「え、あ、まっ…たか、おくんっ!?」




「だって、名無しさんが悪い。お前かーわいーんだもん…なぁ俺もっと、名無しさんと気持ちよくなりたい」

「ぅ…高尾く…っ!!」

「え…ちょ、名無しさん?」

耳元で少し低く囁くとこれまた真っ赤になりながら俺を見つめてくる彼女が可愛いなあなんて。どうやら身の危険を感じたらしい名無しさんが動こうとした途端に苦痛にゆがんだ顔

「あー…と、もしかしなくても…腰痛い…と、か?」

「う、ん…ちょこっとだけ…」

へへって俺を心配させないように微笑んではいるもののかなり辛そうな名無しさんを見ていると、まあ…いたたまれない

「うあー…悪い…。とりあえずもっかい楽な格好で寝て、なんもしないからさっ」

「うん…高尾くんゴメンね」

「ん?何が?」

「だって、あの、なんて言うか折角のムード台無し…にしちゃって…」

その一言を小さく、本当に小さくつぶやいたかと思うともそもそと布団にもぐりこんでしまった名無しさん

「無理させてゴメンな。でも俺、すっげえ嬉しかった。やぁっと大好きな名無しさんちゃんと一つになれたわけですし?そりゃあ、反省もしてるけど、やっぱり嬉しい気持ちが大きいわ…ゴメン、愛してる。これからもずぅっと、な?」

お、布団が動いた。中でどんな顔してんだろうなー…まぁ、どうせ真っ赤なのは想像つくけどさ

「たっ…かおくん!!!」

「わっ、と…ちょ、名無しさんちゃーん、体辛いんだから動くなって…」

急にバっと飛び出たぬくもり、もとい名無しさんは、俺の胸あたりにぎゅううっとくっついて離れない。
何この小動物みたいなの、可愛いんですけど。

「ゴメン、はダメ…私だって、嬉しかったんだもん。だからおあいこでしょ…?だ、から…こちらこそ、よろしくお願いしますと言いますか…その、」

「あーもー止めてお願い…いきなしそういうの禁止だっつーの。」


お互い様な思い


うー…とりあえず、名残惜しいけど名無しさんちゃん、離れようか…俺、結構厳しいんですけど…

ぅ…うん…分かった

……あーそんな顔されたら俺が折れるしかないって分かっててやってるんだろ…はい、ぎゅー

っわ…ふふっ、ありがとう高尾くん

とりあえずこのまま寝るかー今日はまったりする日決定な。



いつでもどこでも何してても彼女がいればまあいいや




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