黒バス

□ハッピーバーズデーマイダーリン
1ページ/1ページ

「み、緑間くっ…ん。ちょっと待っ、て…」

「もう待てない、限界なのだよ…」


何がどうしてこんな状況に…と思考が明後日な方向に向いた私にめざとく気づいた緑間くんは、名無しさん…と言いながら握っていた右手を更に強く包んできた。バスケットボールを片手で易々と掴む彼が本気で握っていたらきっと今ごろ痛くて泣いているであろうことから、力加減を調整してくれているんだなぁとは思う。
思うのだけれど…この距離はいただけない。彼の綺麗で整った顔が目の前に、鼻と鼻がぶつかって、お互いに声を発する度にぶつかる吐息。キスまであと一センチ

今日は愛する彼の誕生日。そして、話は数時間前にさかのぼる

「緑間くん、お誕生日おめでとう。今日は緑間くんの大好きなお汁粉作るねっ」

「あぁ、ありがとう名無しさん。ならば俺も一緒に手伝うのだよ」

「え?でも、緑間くんのお誕生日なのに…」

「いいのだよ。というか…誕生日くら
いはずっと近くにいてもいいだろう?」

190超えの長身で小首を傾げて問う彼を拒絶する理由なんて見当たらなくて、頷いた。

「ぅ…うん。えへへ…嬉しいな。じゃあ早速作ろうか」

作りはじめて数分経過…すでに私は後悔していた。緑間くん、料理苦手だったのね…知らなかった

砂糖はどのくらいなのだ?て言いながらドッサーとお鍋にいきなり投入して火にかける。餅を切ると言って包丁を振りかぶった左手でダイナミックに切ろうとする。
人間苦手なことくらいあるとは思っていたのだけど、意外すぎてついついぽかーんと見つめてしまった。このままでは確実に怪我をしてしまうと思い、緑間くんにはやっぱり見学してもらうことにしたのだけど

「名無しさん、名無しさん。」

と呼びながら後ろからホールドされ身動きが取れない。のしっとくっついてくる彼を見たらきっとチームメイトの高尾くんや、お友達の黄瀬くんはビックリするだろう。
でも多分、これは手伝いが出来なかったことへの照れ隠し。

「ん、緑間くん大丈夫だよ?リビングで待ってる…?」

「離れないと言っただろう…ここにいる。」

まぁ、お汁粉は時間はかかるけどそこまで手がかかるものでもない。とりあえず後ろから回された大きな掌を左手で撫でて、調理を再開する。




「名無しさん、まだか…?」

手伝ってくれる気満々だった分、抱き締める力を強くしたり弱くしたり、手持ち無沙汰な様子の彼が少し…いや、とっても可愛い。

「うん。あとは煮込むだけだよ。緑間くん、待ち時間何かしたいことあるかな?…っひゃ、」

問いかけに答えることもなくいきなり抱き抱えられたと理解したときには既にリビングへ移動していた。そのままソファにかけた緑間くんは正面からぎゅうっと抱きついてきて、色気たっぷりな声で私の名前を呼ぶ。耳元で囁くのだからたちが悪い。そして、移動中に心の準備さえもさせてくれない狭い我が家を少しだけ恨んだ…テーブルの上にちょこんと乗っているイルカのぬいぐるみがこちらをじっと見ている様な視線を感じる

「ど、したの?緑間くん、今日はなんだかいつもと違う気がする」

「初めて…なのだよ。誕生日をこんな風に過ごすのは。今までチームメイトが祝ってくれることはあったのだが…なんだかいつもとは違う気がするのだよ。」

微笑む彼はとてもきれいで、緑色の澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。

「名無しさん、キス…してもいいか?」

かぁぁっと顔が熱を持った。そう、実はまだキスすらもしたことがない私たち。私が手をつないだり、ハグしたりするだけで真っ赤になってのぼせそうになってしまうのが主な原因なんだけど…緑間くんがカッコよすぎるのがいけないんだ、きっと。そう言った私に苦笑いしながら待つ、と言ってくれたのだ。
でも、私だって本音はもっとふれあいたいわけで、ただ、体が追いつかないだけ。そう考えると緑間くんの願いを叶えたい。むしろ私がプレゼントをもらうようなものだ

「うん、お願いしても…いいかな?っん、」

言った瞬間に塞がれる唇はとても熱くて、ただ触れただけなのにどうにかなってしまいそうだった

「名無しさん…っん、愛してる。」

もう一回、もう一回、と何度も迫る唇に頭の中はオーバーヒート。限界が来て、彼にストップをかけてしまった
で、冒頭に戻るわけです。

どうすればこの状況を打破できるのか私には分からない。こうなったらもう今日は思いっきり彼にくっ付くことに決めた

甘えんぼ

ん、ふっみ、どりまく…んんぅ

っ、その顔はダメなのだよ…名無しさん、もっと欲しくなる…

いつも優しくしてくれてありがとう
いつも抱きしめてくれてありがとう
生まれてきてくれて、ありがとう
これからもずっと一緒にいて下さい
だぁい好きだよ

っ名無しさん、…覚悟するのだよ

その後ちょっと焦げたお汁粉を二人で笑いながら食べたのは内緒の話




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ