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□勝己(MHA)3
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昨日は怒濤の展開に一気に疲れてしまって帰ってきてからの記憶があまり残っていない。
アラームをかけ忘れたせいで母親に叩き起こされたけれど、起こすならもっと早くいつも通りの時間に起こしてくれるか、もうこれは遅刻だね休む?くらいの時間に起こしてほしいものです。
バタバタと準備をして家を出たのはいつもよりも15分も遅い時間…なんとか間に合いそう

教室の中に駆け込んだのはHRの本鈴が鳴る数分前。入った瞬間にみんなの視線が集まっていることに気づく。
あぁ、そうか昨日あんな状態で逃げ出した(正確に言うと連れ去られた)ようなものだから…
視線は感じるものの、すぐに先生が来たことによってそのまま何もなくHRが始まった。
ーー授業合間の休憩は短いからいいとして問題は昼休み。
逃げ場はあの中庭くらいしか思い付かないので今日もお世話になることにしよう。クラスの人たちの尋問に近い質問を受けることが何よりも面倒で、怖い。

昼休みのチャイムが聞こえてすぐにお弁当の準備をする。廊下に出て中庭への道のりを早足で進んでいく。早く、一人になりたい。

「遅ぇ」

「……ご、ごめんなさい」

目的地には先客がいました。
見慣れた後ろ姿が見えて引き返そうと回れ右の体勢で右足を後ろに下げた瞬間に振り返り様怒られる。理不尽だ。
遅いと言われても彼と待ち合わせをした覚えはない。

「あの、私邪魔じゃ…」

「邪魔だったらこんなとこまで来ねえよ」

「そ…そうですか」

ベンチの真ん中よりに座る爆豪くんからなるべく距離をおいて座る。いくら意外と優しかったとはいえ、まだ怖いものは怖い。今日はまだ爆発していない右手をじっと見つめると見てんじゃねぇと怒られた。
限られた昼休みをこのまま無駄にするのももったいないのでひとまずお弁当の蓋をあける。

「お前、弁当なんか?」

「え?うん…」

彼はおそらく普段学食なんだろう。事実昨日会ったのも学食だったし。今日は購買で買ったのかパンを食べている。

「それ寄越せ」

「…ん?」

顎で唐揚げを指されてまぁ、一つくらい良いかと思いそのまま容器を彼の方へ向けると口を開ける爆豪くん。もしかしてあーんとかそういうことを求めているのだろうか?

「箸がねぇ」

「え、これ…楊子が刺さってるからどうぞ…」

「ちっ、さっさとしろ」

「む、無理です無理です恥ずかしい…!」

口を開けながら私の手元に顔を近づけてくるから一気に彼との距離が縮まる。また甘い香りがしてかぁっと顔が熱くなる。

「っ、あ…」

「ごちそーさん」

箸を持ってた右手ごと捕まって、私の唐揚げはそのまま彼の口に入っていった。何から何まで距離が近すぎて、捕まれた右手も熱いし不意に頬に見た目よりも柔らかいクリーム色の髪が触れたところがもぞもぞする。触れあう肩のせいで心臓はこのまま爆発しそうな勢いだしとにかく、色々とまずい。

「なぁお前…」

「は、はいっ!」

思わず背筋をピンと伸ばして返事をすると今日一番で彼の眉間に皺がよってしまった。

「いつになったら俺のこと怖くなくなんだよ」

「だって、昨日が初めてだし…」

「こないだまで普通だったじゃねぇか」

「そっ…れは…私、寝てたから…」

「じゃあ寝ろ。今すぐに寝やがれ。」

お弁当に蓋をされてご丁寧に箸を閉まってくれるとこまですごく手早くて思っていたよりも丁寧に優しく触れてはくれているけれど爆豪くん、それおかしくないですか?
ぐい、肩がつかまって引っ張られると私の頭は彼の肩に。この感覚はついこないだ寝ぼけ眼に感じた固さと同じだ

「あ…あの、爆豪くん…」

「……んだよ」

「もしかして、こないだも…その、こうやってくれてた?」

「ん、」

やっぱりそうだったんだと納得すると共に後れ馳せながらも顔に熱が再度集まってくる。彼の個性で内側から爆発でもさせられているのだろうか。
いつの間にかまた手が捕まっていて彼は私の手を強く弱く握っている。何かを確かめるようにぎゅっと力を入れたと思えばそっと力を抜いて親指の腹で手の甲を撫でられるとゾクゾクする。

「んっ、くすぐった…」

「黙って寝ろ」

本日二度目の理不尽だ。彼は私の何を気に入っているのか本当にわからない。昨日の言い分を聞いていると彼もいまいちわかっていないようだけど

「帰り、迎え行くまで動くなよ」

無言を肯定と…は、受け取られなかったのか今度は頬を触られる。寝ろと言われたり返事をしろと言われたり忙しい

「教室、いたくなくて…」

「あ"?っんでだよ」

「昨日みたいになるから…」

昨日の不穏な空気を思い出したのか畳み掛けるように出そうとした言葉を飲み込んだらしい爆豪くんは何かを考え込む様子で

「俺と帰るのは嫌じゃねぇんだな?」

言われてみるとそうとられても仕方がない発言をしたなと気づく。実際今週一週間を通しても彼が直接私に危害を与えたのは昨日の食堂くらいだし、怖いかと問われれば怖いけれど一緒にいることは不思議と嫌ではないことがわかる。私が嫌なことを伝えると彼はその行為をわりとすんなり止めてくれるから。

「……HR終わってから五分以内に行く」

普通科とヒーロー科はかなり離れているけれど彼がそういうならきっと時間通りに来るのだろう。そのくらいならと思い頷くとそれに満足したのか、手を繋いだまま立ち上がるので必然的に私も立ち上がる。

「オラ、行くぞ」

お昼休みも終わりに近かったようで校舎に向かって歩き出す彼に引っ張られるようについていく。歩幅が違うせいで小走りになっている私に気づけばゆっくり歩いてくれるし本当に爆豪くんはどうしちゃったんだろう。
教室まで送ってくれるなんてらしくないよ


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