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□勝己(MHA)7
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髪よし、服…よし、顔……最善を尽くした
朝9時、母にこんなに早くどうしたの?と怪訝な顔をされながら準備をしていると待ち合わせ時間より一時間も早く準備が出来てしまっていた。
そわそわと落ち着かない気持ちをどうにかおさめたくて、部屋の中を掃除してみたりしているけれど効果はない
『準備できたら連絡寄越せ』
通知音が聞こえてわたわたしながらもスマホを確認すると彼からのメッセージが届いた。爆豪くんも相変わらず行動が早いなぁ…と思いつつ、正直にもう準備が出来てしまっている旨を返信すると既読はついたものの返信がなかなかこない。
引かれてしまったのだろうかと頭を抱えること五分、インターホンの音が聞こえてきた。
「名無しさん、彼が来てるわよ」
「え!?」
早すぎる登場にあたふたしながら玄関までいくと確かにそこには爆豪くんの姿が見える
おはよう、とあいさつをすると返事が返ってきてそのまま自然に右手が捕まる。
「すみません。18時頃までには送り届けます」
「あら、いいのよ。こんな素敵な彼と一緒ならゆっくりしてらっしゃい?」
「なっ…おか、お母さん、爆豪くんはそんなんじゃ」
「ありがとうございます。失礼します。」
愛想が良いという訳ではないけれど、爆豪くんが敬語を使っている時点でけっこうレアだなと言うことは頭の片隅においておく。そのまま連れ去られるように家を出たけれど、うん、今日も右手が熱くてたまらない。
「あの、爆豪くん…手…」
「嫌なんかよ」
「い、いやとかいやじゃないとかでもなく…なんかこう…」
「嫌じゃねぇなら止めねえ」
彼には一生勝てる気がしません。
「あと、名前」
「えっ?」
「今日1日でいいから名前で呼べ」
「名前…爆豪くんではなく…?」
こくりと頷く彼に頭を抱える。そもそも話すことにやっと慣れてきたのに突然ハードルが高すぎやしないですか爆豪くん。もう一度ちらりと彼に視線をやると早く呼べとでも言うような表情でじっとこちらを見つめているからたちが悪い。
満を持して口を開いては「か」までは言えるけどどうしても羞恥心が勝ってそこからがうまく言えない。
「名無しさん」
「どうしたの…?」
「名無しさん」
何回も呼ばれれば私だって気づいてしまう。さっさと呼べとおっしゃってるね爆豪くん…
「か…つきくん」
呼べばいい子だと言わんばかりに頭をぐしゃっと撫で付けられてそのまままた歩き始める彼についていく。朝から心臓に悪いこと続きで今日1日生き残れる気がしない。
「あ、の…ずいぶん早かったね」
私が言うのもなんだけど、連絡からうちにくるまでがとてつもなく早かったので素直に疑問に思ったことを聞くと嫌だったのかと逆に問われる。彼は最近嫌か嫌じゃないかで物事を分けようとする節があるのはなんでだろう。私がよく嫌だと言ってしまうからだとしたら改めたいなと思う
「嫌ではないし、むしろ私もなんだか早く準備しすぎちゃったからありがたかったです。」
「そーかよ。」
ふんと鼻を鳴らしてる彼はなんだか少しだけ満足しているように見えた