黒バス

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「あーまだ返事いらなーい。好きになったら返事して。」

好きになること大前提なのね…

「いや、あの、紫原くん。私ね、紫原くんのこと、好きです。」

なんの色気もない告白だけれど、私の気持ちを伝えると今度は彼が驚いた表情。

「………は?いや、名無しさんちんの言う好きとオレの好きってたぶん違うし」

「えっ!?ラブじゃ、ないの…?」

「は!?そうなの!?」

「というか、最近紫原くんの様子がおかしいからてっきり私…なんかわからないけどペットか珍獣扱いでもされてるのかと思ってたよ…」

「っ、なにそれ、確かに名無しさんちん小動物みたいで可愛いなって思ってたけどさー…ってまた顔赤いねー?」

少しだけ意地悪そうな表情を見せて覗き込んで来る彼の顔をかわすことができない。彼が触れている頬が熱い。

「誘えばのこのこ着いてくるし、簡単に笑うし、手繋いでも拒否んねーし、男として見られてねーと思ってたし…」

「それは、紫原くんだからだよ。私だって知らない人相手に警戒心ゼロなんてこと、ないもん。」

「そーゆーわりには初対面の時にケーキ屋きたじゃん。」

ぶーっとまたふて腐れたような顔をしておでこをぶつけてくる紫原くん。地味に痛いし、縮まる距離に心臓がおかしくなりそう。

「そ、れは…だって、あの夜から、ずっと…あの、一目惚れだったから…あの、ちょっと離れてもらってもいいかなぁ…?心臓がもたないです…」

思わず敬語になるし、必死に両手で顔を隠すけど、その手は紫原くんの片手に意図も簡単に捕まってしまった

「……可愛すぎるから。ほんと、もう、そーゆーの止めて…」

大きなため息をついて私の肩に額を乗せてくる彼にまたドキドキさせられる。

「じゃあさ、オレたち恋人ってことでいーの?」

「えっ!?そ、そんな、おそれ多い…紫原くんだったらより取りみどりでしょ!?」

「は?何言ってんの…名無しさんちんがいいって言ってんの。名無しさんちん以外、考えらんねーし。あの店で幸せそうにケーキ食べてる名無しさんちん見てたらなんてゆーか、この子だって確信したし。ねぇ、恋人同士ならぎゅーもちゅーも我慢しなくてもいいのー?」

オレ、色々限界だったんだよね。
少しかすれた声、耳元で囁かれたら断ることなんて…

「えっ、今…!?ちょ、まって、だめ。」

出来ないかと思ったけど生憎とこんな公共の場でそんなことが出来るわけもなく、

「……名無しさんちんのケチー」

「ケチじゃないもん…というか、紫原くん、随分慣れてる…?」

「は?こんなん普通だし。好きな子に好きって言ったり、くっついたりするの普通じゃん。」

「そ、そうかな…私、何もかも初めて尽くしだからお手柔らかにお願いします…」

そう溢すとまた驚いたような顔をして

「ん、オレ名無しさんちんのこと大事だからなるべく我慢する。けど、少しずつでいーから慣らしていこ?名無しさんちんのハジメテ全部オレのもんだからね?絶対だよ?」

「〜〜っ、うー、ずるい、そんな顔でそんなこと言われたら…ずるいよ紫原くん…よし、お魚見よう!お魚…!」

熱を帯びた彼の顔を見てられなくってつい、水槽に逸らした視線。だけど水槽ごしに見えるのは相も変わらずこちらを見つめる彼の姿…は、少しふて腐れたような表情だ。
そんな彼に気づかないふりをして、やれクエがいた、ジンベエザメだなんて必死に集中しようとするけれど緊張で支離滅裂な言葉になってしまう。

「まぁ、名無しさんちんのペースでいいよもう。」

仕方がないなぁと言った感じに優しげな瞳を見せて頭をそっと撫でてくる彼はとても年下とは思えない

「名無しさんちん、ほんとかーわいい。」

「それね、成人したのとっくの昔の女に言う台詞じゃないからね…」

「そんなん関係ねーし。あーもう、ほんとにさぁ、ぎゅーってするのもダメなの?」

今それをされると私はもう死んじゃうので丁重にお断りして、またデートが再開されたのでした。
繋ぐ手はいつもと変わらないはずなのに、なぜか今日はいつも以上に気恥ずかしい。
私ばかり照れてしまっているのも悔しいけれど、隣を上機嫌で歩く紫原くんが可愛くてかっこよくてたまらないので一生勝てそうにもない。


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