黒バス

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「ちょ、待って。名無しさんちん何言って…本気?」

「いや、ごめんなさい…今すぐ忘れてください。聞かなかったことに…」

戸惑いを隠さない彼を見れば見るほどに自分が言った言葉が恥ずかしくなる。
よくよく考えればそういう意味に
も取れるじゃないか…紫原くんが思わず手を出したくなるほどの魅力が私にあるだなんて全く思えないし病人にどうこうする人だとも思わないけど、確かに私は今、帰らないでだなんて月9ヒロインもビックリな台詞を素で言ってしまった。恥ずかしい。

「あ、あのね、そういう意味じゃ…っ、いや、あのなんていうか、ちょっと寂しいななんて思ったんだけどいい歳した大人が何言ってんだって話だね。ごめんなさい…」

「……こんな時くらい甘えていーんじゃないの。名無しさんちん、全然甘えてくんねーし、オレはまだ一緒にいたいしー。」

抱きよせられて、風邪が移っちゃうとか色々言わなきゃいけないことがあるのに彼の優しすぎる声を聞くと何も言えなくなってしまう

「そんなに甘やかしたら大変なことになるんだからね。」

ぎゅっと抱きついて言ってみても返事はただ、背中に回る腕だけ。

「まぁ正直、名無しさんちんの家来んの初めてだしさーなんかいい匂いするしーこのままいただきますって言うのも考えなくもないんだけど。名無しさんちんにそんなおいしい展開期待する方が無駄って知ってるしー」

「ぁ、や、ちょ…汗臭いか、ら…っ、」

ちょっぴり不貞腐れた様子で、すんすん鼻を鳴らしながら首筋に顔を寄せてくる彼をなんとか引き剥がそうとするけど元気な時でも無理なことが今できるわけもなく。手はあっさりと捕まって首筋をがぶりとかじられる。

「寝よっか。」

そのままばたりベットに倒れられたら抱き締められたままだし、腕枕というより抱き枕状態だ。
重たいから嫌だと言っても私のベッドが小さいからこう寝るのが一番良いと言われてしまうと何も言えない

「紫原くんが大きすぎるんだよ…」

「はいはい文句言わないのー。オレ、帰っちゃうよ?」

「それは嫌です…でも、風邪移ったらごめんね…」

意地悪を言う彼に今さらながらの謝罪をすると、笑っていい子いい子って言いながら頭を撫でてくる。あー…ずるい。

「ふふっ…紫原くん、ほんとに大きいよね…○トロみたいだね」

「なにそれー。ト○ロよりオレの方が大きいし」

「そうなの…?知らなかったぁ…」

「そうだしー。名無しさんちん寝ていいよ。明日も休みとってるんでしょ?ゆっくりおやすみー。」

他愛ない話をしてたら薬がいよいよ効いてきたみたいでどんどん重くなっていく瞼。トントンとリズミカルに叩かれる背中と、彼の暖かい体温の攻撃に抗える訳もなくそのまま落ちていった


**


昨日よりはスッキリしたような、してないような。小説だったら紫原くんのお陰ですっかり治ったよ!って言えると思ったのに残念ながら完治には及ばず。
隣にいるはずの彼の温もりがなくて、すっかり目が覚めてしまった。よく考えると平日なんだから紫原くんは学校があるはずだし、いないべきだよね。昨日の夜にワガママ聞いてくれただけありがたいくらい。
でも、寂しいな。

ふと、寝返りをうって隣をみると彼が昨日着ていたパーカーが目にはいる。そういえば寝る時に暑いって脱いでたなぁと思い出して、それをなんとか手繰り寄せる。

「紫原くんのにおいだぁ…」

ぎゅうぎゅう抱き締めてるとまた安心して眠くなってきた。ご飯を作るのもめんどくさい。正直、まだそんなに食欲もないからもういいや。寝る。という結論に達した。おやすみなさい。

「名無しさんちーん、ご飯食べれるー?…っ、あのさぁ〜あんまり可愛いことしてると食べちゃうよ?」

ガチャリとドアが開く音から間もなく聞こえた声。
彼がまだいてくれたことが分かり嬉しくなる。と、同時に自分がやってた恥ずかしいことに気づいてもそもそと布団に隠れる。もう手遅れだとはわかっているけど

「ご、めん…つい…」

布団から顔だけ覗かせるとあきれ顔で少しだけ頬が赤い彼を見つける。あれ?どうして紫原くんが赤面してるの…?

「はぁ…昨日必死で耐えてたのに…パーカーなんかよりここに本物がいるんだけどー?」

恥ずかしさからかさらにぎゅうっと抱き締めてしまっていたパーカーを取り上げられて目の前には両手を広げた紫原くん。おお…もしかしなくてもこれはハグ待ちですか…
ほんの少し、距離を詰めるともっとって不満顔でぐいっと引き寄せられる身体

「よしよし。早く良くなるといいね〜ご飯作ったけど食べれる?まだ食べれないんならお粥作るし。」

「じゃあ、普通のご飯頂こうかな…」

ありがとうの意味を込めてぎゅっと抱きつくと甘えただねー?って逆に腕の中に閉じ込められる。うちの彼が優しすぎて困ります。

今日こそは完治に向けて休むぞと意気込む私から離れることなく一緒にベッドに寝転んで、なおかつひたすらにこちらを構い倒していた紫原くんが風邪を引かなかったというのは不幸中の幸い。
さすがスポーツマンは身体が丈夫なんだね?と言うと名無しさんちんは女の子なんだから当たり前でしょ?って首をこてんと傾げて言う姿が可愛すぎて、ちょっと返事としてはおかしいけれどよしとしたのはまた別の話。


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