黒バス
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「……朝ごはんは、私が作ります」
「えー名無しさんちん、絶対起きねーしょ?」
「うっ…だ、大丈夫だよ起きれるよ…まさか人のお家でそんな熟睡しないよ?」
「さっきまで気持ちよさそうに寝てたくせに」
「うっ…あ、映画、映画見よう?」
頬を摘ままれながら指摘されたことがごもっともすぎてまた顔がかぁっと赤くなる。何も言い返せないけれど一先ず今日の目的を思い出して言ってみると彼は苦い顔
「ねえ、名無しさんちん?本当に今日映画だけが目的で来たのー?」
むすぅっと頬を膨らませて此方を覗き込んでくる紫原くんは少しだけ可愛らしくて、だけど何かを期待したような男の人の表情をしていて
「え、映画だよ…」
「む、名無しさんちん意地悪〜」
ふてくされた顔のまま、先にシャワー入っといでと反論する間もなく脱衣室に放り込まれる。こんな状況にさせられたら意識してなかったとしても意識してしまう。どうしよう…大丈夫かなちゃんとできるかな…何がとは聞かないで頂きたい。
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「あれ…?紫原くん、寝てる…?」
無駄に時間をかけてシャワーからあがるとソファの上に大きな生き物が寝転がっている。
すやすやと寝息をたてて、眠る姿は
「か、可愛いぃぃぃ…」
大きくて、かっこよくて、頼りがいもあって、そんな彼がこんなにも可愛い瞬間があるだなんて…でもこんなところで眠ったら身体が痛くなるだろうし風邪を引いてしまうかもしれない…でももう少し見ていたいという葛藤の末、少しだけ声をかけてみたけれど無反応。
「紫原くん、紫原くん、あの…ちゃんとベッドで寝ないと…わっ、」
「ん、なに…名無しさんちん、ベッドとかせっきょくてきぃ〜」
へへ〜なんて言いながら身体を抱き込まれて身動き一つとることができない。
「ちょ、やっ…む、紫原くん…やめ、」
もぞもぞ私の抱き方を変えては戻しを繰り返してどうやら落ち着くポジションを探しているらしい
「ん〜、名無しさんちん…」
抱き締める力がふいに緩んだけどまぁ今度は力が抜けたせいで腕が重たくてよけられない。
「紫原くん、あの…うー…」
もう無理…パンクする…耐えられない。羞恥心から涙が出そうなのをおさえることでいっぱいいっぱいだ。
抜け出すことも出来ないし彼の気がすむまでこのままでいるしかないのだろうか。
早々に諦めてこうなったら寝てしまおうと瞳を閉じた瞬間に
「…っ、え…?」
ねえ、紫原くん。これがファーストキスだって言ったら笑いますか?
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