黒バス

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「室ちんに峰ちん、あと火神絶対許さねーし。」

「ははは、ごめんアツシ。この二人はさすがに止められないだろ?」

「こんな奴ら適当にあしらってよ室ちん。はー…なんでせっかく二人きりだったのに邪魔されなきゃなんねーの。」

あの後非常に楽しそうにベッドの上でくっついてくる紫原くんから逃げ続け、30分もしないうちに家のチャイムが鳴った。
寝室で待ってて、と頭を一撫でしたあと、不機嫌さを隠そうともせずに玄関に向かった紫原くんを待っていたのはお友達三人組。

「別にいーじゃねーかよ、おまえん家なんて今更だろ?」

「この試合、見たくなったんだよ。」

「それうちに火神が勝手に置いてったやつだしー別にここで見る必要ねーじゃん。」

「アツシ、名無しさんさんといたのか?」

氷室さんの声は聞いたことがある。ストバス?の試合を観たときにいた彼だ。
寝室からつい、耳をすませているともはや会話が成立していないみんなの掛け合い。
けれど突然出てきた私の名前にビックリする。いくら一度会ったことがあるとはいえ名前を覚えられているだなんて紫原くん、お友達に私の話してるのかな?

「わかっててきたんでしょー室ちんまじ性格悪いし。」

「はは、アツシの彼女こないだの一瞬しか見れなかったからな。ちょっと興味があって。」

「は!?お前、恋人いるのか…?」

「バカがみなんなのーいちゃ悪い?つーか、帰ってよ。空気読んで。」

「紫原に彼女…まじか…まじか…」

もうこのテンポのいい会話を聞いているだけでなんだか楽しくなってしまう。紫原くんはなんだと思われているのか…そういえば黄瀬くんもすごく驚いてたな。

「やだ。もったいないから見せない。」

待って、もったいないとか言わないで紫原くん。ハードルがずいぶん上がってるこれ。
でもここで出ていったらとんだでしゃばりなおばちゃんになってしまう。グッと我慢。

「アツシ、見てみなよ。これは引き下がる顔じゃない。」

「………五秒見たら帰ってよ。」

「みじかっ!?」

五秒って挨拶もできないね?紫原くんはどこまで私のハードルを上げれば気がすむのだろうか。

「うー…名無しさんちーん、ごめん五秒だけこっちおいで」

突如開けられるドアに少しだけビックリしたけどまだ紫原くんの影に隠れていて三人の姿は見えない。ちょっとまって紫原くん、私部屋着だよ。

「は、初めまして。みょうじ名無しさんです。こんな格好でごめんなさい…」

「紫原の彼女!?まじか…よくあいつと付き合えるな…」

「しかも普通の人だ…」

ひっそりと紫原くんの影からご挨拶すると詰め寄る二つの影。
いくら紫原くんで見慣れたとはいえ、少しだけ首が痛い。
彼はわりと私の方を覗き込んだりだとか、視線を合わせてくれることの方が多いことに気づいた。こんなところでも優しさに感謝です。
そんなことに感動しているとばたりと閉められるドア。

「てめっ紫原!なんで閉めんだよ!?」

「うるさい。もーいーでしょはい解散〜。」

「うん。噂の名無しさんさんも見れたことだしタイガ、青峰くん二人とももう諦めようか。」

アツシを怒らせてもあとが怖いしねと続ける氷室くんに激しく同意しつつ、寝室出入り口前でただただぼーっとすること数分。どうやら嵐のような彼らは帰ったようだ。

「はー…最悪。このまま名無しさんちん食べちゃおうと思ってたのにダイナシなんだけど。」

「た、食べ…!?ちょ、ん…っかじ、らないで…」

「やだ。お預けされた分離れねえし。」

「お預けって…んっや、無理…はずか、しい…」

ドアを開けたかと思うと立ったまま抱き込まれて、首に噛みつかれ頬にキスされたかと思いきや今度は耳元に唇が来て…あれよあれよという間に紫原くんに完全に捕まってしまった。
どんな顔をしているのかもわからないし、これ以上彼の顔を見ることなんて恥ずかしくて出来なくて、必死に顔を隠した両手は彼の片手によって簡単に捕まえられてしまう。

「名無しさんちんのいじわるー。もっとよく顔見せて欲しいんだけど?」

「むっ、無理だよ…あの、あまりこっちを見ないで…うー…」

覗き込まれると交わる視線、唇がまた重なって、思わずぎゅっと目を瞑っていたけれど離れた瞬間に少しだけ目を開けるとひどく優しげな表情が見えた。

「ま、いーや。今度またゆっくりねー。」

「ご、ごめんなさい…」

ふいに腰を支えていた彼の手から力が抜けたようでその場にへたりこんでしまう。

「あり?名無しさんちんもしかして、腰抜かしたー?」

「うん…」

「しばらくはちゅーとぎゅーでいっぱいいっぱいだねー」

「うん…」

うんしか言えない。彼にはずいぶんとご迷惑をおかけしていることは自覚しているけれど、つい甘えてしまう。
名無しさんちんの可愛い顔が見れたし、ご飯食べよっかー。なんて言いながらリビングに向かう彼には頭が上がらない。私、頑張るね紫原くん。

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