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□勝己(MHA)2
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ーー放課後、逃げんなよ
昼休み終わり際の台詞が頭から離れない。逃げんなよと言われて、逃げる度胸は私にはないしどうせ逃げたって恐怖が明日に持ち越しになるだけだと妙に達観してしまった。どうせ殺(ヤ)やれるなら言うこと聞かないモブよりも言うことを聞くモブの方が幾分かマシな采配が下されるかもしれないと一縷の望みにかけてみる。
「ねえ、みょうじさん?お昼休みさぁ爆豪くんとなに話してたの?」
ひたすらに黙って席で彼を待っていたら予想通りの展開に思わず苦笑い
「…特に、何もないよ。」
「すごいよね〜ヒーロー科でも将来有望なのに性格に難あり、な爆豪くんが無個性さんに話しかけるなんて。」
どんな手で取り入ったの?とかお前ごときが話してはいけない相手だと言外に含めて複数人に机を囲まれる。
これ以上教室には居たくない。逃げるなよとは言われたけれどよく考えたら彼は私のクラスを知らないはずだし、教室で待たなきゃならないという話ではないはずだ
「あ、の…私、もう帰るので」
どけてもらえないだろうかと控えめに言ってみるけれど全く効果はなく、むしろ逆効果だった。詳しく話が聞きたいなだなんて肩を捕まれて思わずビクリとする
「そんなに怖がらないでよなんか私が悪者みたいじゃない…?」
今現在この状況における私にとっては悪者です。だなんて言うことも出来ないし、どうやりすごせばいいのか分からなくなりまた視線は机に逆戻り。だって、個性を使われたら太刀打ちする術なんてないんだから。
「…いたっ!?」
「触んなモブ……オイ、帰んぞ」
一瞬の出来事だ。肩をつかんでいたクラスメイトの手を叩き落としたその手でそのまま私の手首を掴んだ彼に引っ張られて教室を後にする。驚きのあまり言葉を失って黙って着いていくと昇降口で立ち止まる爆豪くん。
乱暴な手つきで自分の靴を出したかと思うと手は離さないまま私のクラスの下駄箱まで向かっていく
「あ、の…」
「捕まえとかねぇと逃げんだろ」
「に、逃げ…」
逃げないと言いきれないところが悲しい。まさに彼が来る直前に逃げ出そうとしていたのだから。言葉と共に少しだけ強めに握られた手首が痛い。思わず顔をしかめると彼もこれまた顔をしかめていたけれどずいぶんと力加減が優しくなった。もしかしたら彼は私が思ってたよりも怖い人じゃないのかもしれない。
手を捕まれたまま、校門をくぐるとお昼休みに見かけたA組の男の子たちがちょうど帰るところだったらしくこちらを見やって、目が飛び出そうなほど驚いていた。
「まてまてまて爆豪、落ち着け。お前それ犯罪一歩手前だから、な?」
「一歩手前どころか誘拐じゃねぇか…?」
すごい勢いで走って来たかと思うと必死に彼を止めようとしてくれている彼らは、これからどうなるのか不安で堪らなかった私にとってはとてもありがたい存在だった。
「あ"?同意の上だっつーの!コロすぞ」
「同意、してな…」
「したよな?」
「してな、」
「行くぞ」
「待て、本当にお前おかしくないか?なんでその子にそんな執着すんだよ」
そう、それだ。私は執着されるようなことをした覚えも言った覚えもない。けれど目の前の彼は全てにおいて執着という言葉に相応しい行動を起こしている。昼休みになにやら色々ありました言われたことは覚えているけれど、彼と私の接点なんてここ四日間ほどのしかも会話がない関係だったのだから。
「…知らねー」
そぉっと隣の彼を見てみると不機嫌そうに眉間に皺がよっている。手は未だに捕まれたままだ。
「し、知らないって…」
「別にいいだろーが。こいつが近くにいねえと落ち着かねんだよ。」
「え?」
「お前が隣にいるとなんか気ィ抜けんだよ。」
「はぁ…」
「ば、爆豪お前…」
「んだよ」
「結構すごいこと言ってることに気づいてんのか?」
「あ"?」
「君がそばにいないとダメなんだーみたいなほら!」
「アホ面、ここで死ぬか?オイ?」
「いや、これはそうとられても仕方がない。つーかそうじゃねえの?」
「よしクソ髪もろともぶっ殺す」
「ほらその子見てみろよ放心状態だぞ…どう考えてもお前、その子のこと好きなんじゃ」
「あ"ぁ"!?誰がこんなモブ女!!!!」
「も…もぶ…」
モブのことは放っておいてくれればいいのにどうしたって彼は手を離してくれない。顔を真っ赤にさせたまま、怒りのあまり震える爆豪くんが怖い
「ダメだこれ初恋拗らせたとんだ童貞野郎だ」
黒髪の彼が発言した直後、今まで強力な磁石のように離れなかった右手がふっと離されたかと思うと聞こえる爆発音
「爆豪落ち着け。瀬呂に悪気はねえ…し、お前のその反応肯定してるようなもんだぞ?」
「誰が、童貞だ、こら、」
ボンボン聞こえる爆発音が怖い。こんな怖い個性なんてなかなか巡り会う機会がなかったしなるべく危険な個性もちの人の視界に入らないように生きてきたから怖くてたまらない。先ほど至近距離で爆破されて少しだけ燃えたしまった前髪が視界に入り、ゾッとした
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