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□勝己(MHA)5
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本当に学校に行けるの?と問いかけにも適当に答えて準備をする。本当はあまり行きたくはないけれど、ずいぶんと気持ちが軽くなったのは爆豪くんのおかげだろう。言いたいことを言ってみたらスッキリしたというかなんというか…
帰り道は彼に送ってもらうのよ〜なんて緩い母に空返事をしつつ家を出る
「遅ぇ」
「……へ?」
玄関から出て見るとむうっとした顔の彼がいらっしゃいました。
「え、ちょ…爆豪くん、」
無言で右手が捕まって、ずかずかと歩く爆豪くんに小走りで着いていくと緩む歩調。捕まるのにも慣れたとはいえ毎度心臓に悪い
行くとは言ったものの少しだけあの事を聞かれたらどうすればいいかななんて考えてた。爆豪くんは切島くんかもしれないけどどこからか話を聞いたらしいし、学校からそう離れていない場所での出来事だから多少は噂になっているだろう。生徒名が伏せられていたとしても次の日に休んだ私はどうせいい話のネタだ。
爆豪くんと一緒にいればからかわれるような気遣われるような嫌な視線に曝されることもないだろうななんて。
「んだよその目。今日だけじゃねえし毎日迎えに来るから寝坊すんなよ」
「そっ…」
「そこまでしなくていいなんて台詞は聞かねえ」
有無も言わさず…言わせてもらえず
「あの、爆豪くん忙しいから…」
「おー、お前の世話で大忙しだ」
「私なんか構ってる時間がもったいな…」
「あ"?俺の時間をどう使おうと俺の勝手だろうが」
「〜っ、ご、ごめんなさ…っ」
「謝んなバカ」
「…大丈夫だから」
「これ以上なんか文句言いやがったらその口塞ぐ」
矢継ぎ早に言いくるめられると私はもうなにも言えない。なにも言わなくなった私に満足したのか手を繋ぎ直して歩き出す。歩調はさっきとうって変わってゆっくりだ。
「爆豪くん」
「あ?」
「私、まだ何も返事してないです」
「あー…"嫌"じゃなきゃ今は別にいい」
「……ありがとうございます」
「おう」
"今"はだからなって強調してきた爆豪くんに思わず笑みが溢れた。
そのまま電車に乗り込んで、学校に向かう道すがら私に視線がというよりも爆豪くんの隣にいる女子という意味での視線が痛かったけれどまぁそれは仕方がない。
電車の中でも潰されないように隅の方に寄せられたりとか爆豪くんはどうしたのかなってくらい優しくてなんだかそわそわする
*
悪いからいいよの言葉も無視されてご丁寧にギリギリの時間に教室まで送ってもらい、昼休みはいつもの場所へダッシュしたおかげでひどく絡まれることもなくここまでは平穏に過ごせている。
お弁当のおかずをちょこちょこ隣の彼に奪われつつも完食し、ヒーロー科へ向かう。こちらまでくるのは初めてだからなんだか緊張するけれど私にはワイシャツを返さなければならないという使命があるのでぐっと堪えた
「余計なこと喋んなよただ返しゃーいい。」
「な、なんの念おしなの爆豪くん…」
「あと、うるさいやつらがうぜえくらいいるが…無視だな」
「無視はできないなぁ…」
一言二言三言注意という名のお小言を聞きながらたどり着いたけれど、結局緊張してしまって爆豪くんの影に隠れた
「クソ髪いるか」
「あら爆豪ちゃん、今日は早いのね。切島ちゃんはまだ学食から戻ってきてないわ」
クソ髪だなんて…爆豪くん、お友達の名前くらい呼んであげればいいのに
そんなことを考えて爆豪くんの影で苦笑いをしていると、ところで後ろに隠れている彼女は?と声がかかってハッとする
「…私?」
「そう、あなた以外にいないわ」
「ちっ…みょうじ名無しさん。普通科の無個性」
「ばっ…くごうくん…」
「隠すことじゃねぇだろ。お前が気にしすぎなんだよ」
ここでわざわざ無個性だなんて言わなくてもいいじゃない…せっかく女の子と話す機会が出来たのにもうだめだ
「ケロケロ…二人とも仲が良いのね。名無しさんちゃん、蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」
「え、あ…ありがとう…!」
「なんのお礼かしら…?爆豪ちゃんの彼女とは思えないくらい真逆なのね」
「か、彼女!?いや、そんなとんでもない、違…痛っ」
「あ"?お前が一言はいって言やぁそうなんだろうが!」
爆豪くんにぐりぐりと頭頂部を押されて痛いことこの上ない。止めてと言っても不貞腐れた顔で止めてくれる様子がないし、爆豪くんが言ってることは間違ってもいないので黙ることにする。
無個性という単語が出たにも関わらず目の前の彼女は相変わらずこちらを優しく見つめているし、周りの人たちも嫌な視線を浴びせてこない
「だからお前は気にしすぎっつったんだよ」
無個性、無個性とバカにしてくるわけでもなくただ一人の人間として接してもらえることにここまで喜びを感じれるだなんて知らなかった
「爆豪くんも…?」
そうだよね。最初からまっすぐ向き合ってくれた
「俺は、別に。お前がそうなんだからそれでいんだよバーカ」
後に聞いた話だけれど彼は昔、無個性だった緑谷くんを苛めていた前科があったから少しだけばつの悪い思いをしていたらしい。それでもこの時投げ掛けられた言葉は嬉しかった。
*